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神道専門家の羽賀ヒカル監修のもと、架空のキャラクターの
新米巫女の橋本ユリが、神社に関する知識をわかりやすく解説します。

【祓戸大神】私たちの罪や穢れをすべて消滅させる有難い神様!

2020年1月4日

こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。

橋本ユリ
「祓戸大神」は「はらえどのおおかみ」と読み、「祓」を司る神様を指す総称です。あまり聞き慣れない神様かと思いますが、実は私たち日本人にとって、とても大事な神様なんです。


では、「祓」を司るってなに? そしてその神様はどんな神様? というのを、これから見ていきす。

それでは参りましょう!

祓戸大神とは

まず「祓戸」ですが、「はらえど」、または「はらいど」と読み、これは単純に「祓うところ」「祓う場所」を意味します。主に神官が祓いを行なう所であり、そこに祀られている神様というのが「祓戸大神」ということになります。

では「祓戸大神」と総称されるのがどの神様なのかというのは次で見ていきますが、そもそも「祓い」というのは何なのか、その概念について軽く説明しましょう。
日本では古くから、祓い、あるいはみそぎという風習がありますが、何を祓うのかというと、「罪」や「穢(けが)れ」です。

「罪」というと、悪いことをした、法を犯した(犯罪)、あるいは西洋の宗教でいう「原罪」などが思い浮かびますが、日本神道のそれは少し異なります。
ではどんなものかというと、それは日々の生活の中で積もっていく埃や、溜まる垢のようなものです。

そして「穢れ」ですが、こちらはどちらかというと受け身なものもあり、例えば自然災害などの災厄に遭うこともこれに当たります。また、「気枯れ」とも書き、気力が充分でなく、清浄な気持ちを保てない状態を指すこともあります。

では、日々少しずつ積もってしまう「罪」や突発的に被る「穢れ」などに、どう対処すればいいのでしょう。
それが、「祓い」です。

神道の「祝詞」の中でも重要な「大祓詞(おおはらえのことば)」はその「祓い」の言葉でもあり、かつ、どの神様がどのように罪や穢れを祓ってくれるのか、それを詳細に説明する文言でもあります。毎年六月と十二月の末に全国の神社で行われる「大祓」の儀式で唱えられます。

その「大祓詞」の中で、罪や穢れをきれいに祓ってくれる神様として、以下の四神が出てきます。

 

四神

  • 瀬織津比売(せおりつひめ)」罪・穢れを川から海へ流す
  • 速開都比売(はやあきつひめ)」海の底で罪・穢れを飲み込む
  • 気吹戸主(いぶきどぬし)」根の国・底の国に息吹を放つ
  • 速佐須良比売(はやさすらひめ)」根の国・底の国に持ち込まれた罪・穢れをさすらい消滅させる
 

ご利益

開運、運気上昇

「祓戸大神」によるご利益ですが、これはたとえば金運アップや恋愛成就といった、特定の分野に効果があるというものではありません。しいて言えば、心機一転、全体運のアップというところでしょうか。

全国の神社で六月と十二月に「大祓い」の行事が行われますが、これは、少なくとも年に二回は身も心も祓い清めましょうという目安だといえるでしょう。

現代社会では、たとえば毎日目に入る大量の広告、ネガティブな言葉、SNS疲れなどにより、知らず知らずのうちにちょっとしたストレスや気苦労が溜まってしまいます。それらは、ひとつひとつは明確な「悪」とは言えないモノですが、溜まってしまうと、もともとの澄んだ自分から遠ざかってしまうのです。最近は「掃除」がブームになっていますが、これも実は、考え方は同じです。デジタル的な例えでいえば、「たまったキャッシュをクリア」して「メモリを解放」するようなイメージです。そうすると、どこがどうというわけではないですが、全体が軽くなって、動きやすくなるでしょう。

 

祓戸大神の神話

祓戸大神にまつわる神話としては、古事記にイザナギノミコトの禊(みそぎ)の様子が描かれています。

夫婦で国を作っていたイザナギノミコトとイザナギノミコトですが、火の神「カグヅチ」を産む際に大やけどを負い、イザナミノミコトは亡くなってしまいます。諦めきれないイザナギノミコトは、イザナミノミコトのいる黄泉の国へと追いかけていきますが、そこで変わり果てた姿になったイザナミノミコトを見てしまい、地上へと逃げ帰ります。その際、イザナギノミコトは黄泉の国の穢れを落とすため、衣服を脱いで水浴びをしますが、その衣服や垢、汚れから次々と神が生まれました。

「ここをもちて伊邪那伎大神詔りたまひしく、吾はいなしこめしこめき穢き国に到りてありけり。故、吾は御身の禊為むとのりたまひて、竺紫の日向の橘の小門の阿波岐原に到りまして、禊ぎ祓ひたまひき」(古事記より)

要約すると、
「イザナミノミコトは穢れた国から戻ってきたため、禊をしなければならないと仰り、筑紫の日向の、橘の小門の阿波岐原というところで禊をなさった」

ということが書かれています。ちなみに筑紫というのは九州のことで、宮崎県宮崎市にある阿波岐原町の「みそぎ池」や、福岡県福岡市西区にある「小戸(おど)神宮」にも伝承が残っています。

橋本ユリ
では、この禊で生まれた神々を見ていきましょう。


 

衣服から生まれた神

  • 衝立船戸神(つきたつふなとのかみ)
  • 道之長乳歯神(みちのながちはのかみ)
  • 時量師神(ときはかしのかみ)
  • 和豆良比能宇斯能神(わづらひのうしのかみ)
  • 道俣神(ちまたのかみ)
  • 飽咋之宇斯能神(あきぐひのうしのかみ)
  • 奥疎神(おきざかるのかみ)
  • 奥津那芸佐毘古神(おくつなぎさびこのかみ)
  • 奥津甲斐弁羅神(おきつかひべらのかみ)
  • 辺疎神(へざかるのかみ)
  • 辺津那芸佐毘古神(へつなぎさびこのかみ)
  • 辺津甲斐弁羅神(へつかひべらのかみ)
 

災いの神(禍津神・まがつかみ)

  • 八十禍津日神(やそまがつひのかみ)
  • 大禍津日神(おほまがつひのかみ)
 

禍(まが)を直す神(直毘神・なおびのかみ)

  • 神直毘神(かむなおびのかみ)
  • 大直毘神(おほなおびのかみ)
  • 伊豆能売(いづのめ)
 

水の底での禊で生まれた神

  • 底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)
  • 底筒之男神(そこつつのをのかみ)
 

水の中程での禊で生まれた神

  • 中津綿津見神(なかつわたつみのかみ)
  • 中筒之男神(なかつつのをのかみ)
 

水の表面での禊で生まれた神

  • 上津綿津見神(うはつわたつみのかみ)
  • 上筒之男神(うはつつのをのかみ)
 

ちなみに、この禊の最後に生まれたのが、三貴子と呼ばれる
  • 天照大御神(あまてらすおおみかみ)
  • 月読命(つくよみのみこと)
  • 須佐之男命(すさのおのみこと)であり、日本神話の重要な役割を果たします。
 

このようにたくさんの神が生まれたのですが、三貴子をはじめ、このすべてが「祓戸大神」というわけではありません。

「祓戸大神」を具体的に知るためには、神社で奏上(神様に申し上げること)される「祝詞(のりと)」を見ていきましょう。

 

祓詞(はらえことば)

神事などに際し、神前にふさわしく罪・穢れを祓うため唱える「祝詞(のりと)」の中でも重要なのが、「祓詞(はらえことば)」です。祝詞の中でも序文のようなもので、冒頭で奏上されます。

「掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等 諸々の禍事・罪・穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと 恐み恐みも白す」

要約すると、
「イザナギノミコトが阿波岐原で禊祓いをされた時に生まれた『祓戸の大神』よ、様々な災難・罪・穢れがありましたら祓いお清めください」

となります。先ほど紹介した、イザナギノミコトの禊から生まれた神々の話がそのまま出てきますが、「祓戸大神」という単語自体は古事記や日本書紀ではなく、この「祓詞」で出てくるものです。

 

大祓詞(おおはらえのことば)

「大祓詞」は正式には「六月晦大祓祝詞(みなづきつごもりのおおはらえののりと)」といいます。元々は六月と十二月の大祓いでそれぞれ異なる文言があったようですが、現在の「大祓詞」は六月のものとなっています。
大祓いに参加したことがある人は聞いたことがあるかもしれませんが、とても長い祝詞です。その中から、「祓戸大神」にまつわる部分を抜粋し、少しずつ見ていきましょう。

「天の益人等が過ち犯しけむ 種種の罪事は 天津罪国津罪 許許太久の罪出む 此く出ば(中略)天津祝詞の太祝詞事を宣れ 此く宣らば 天津神は 焼鎌の利鎌以て打ち掃ふ事の如く 遺る罪は在らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を」

要約すると、「日本の民が知らない間や故意に犯してしまう、天つ罪・国つ罪などのいろいろの罪が現れるでしょうが、そのときは、この祝詞を唱えなさい。そうすれば天つ神は、鋭い鎌で残さず打ち払うように、残る罪が一切ないよう祓い清められるでしょう」となります。

天つ罪というのは、神々の住む高天原でスサノオノミコトが犯した罪を指すともいわれ、いずれも農耕を妨害する行為となっています。また国つ罪は、暴力行為のほか病気や災害を含み、現代の「罪」の概念からすると差別的とも取れるため、現在は「天つ罪・国つ罪」を説明する罪名は「大祓詞」から省かれています。
要点としては「民が犯してしまった罪は、祝詞を唱えることによって祓い清められる」という部分でしょう。諸々の罪は「償う」のではなく、「祓う」というところが、日本神道における重要な価値観ともなっています。

橋本ユリ
さて、続いては、祓われた罪・穢れがどのようにして消滅するに至るのか、「祓戸大神」である四神の活躍とともに見ていきましょう。


「高山の末 短山の末より 佐久那太理に落ち多岐つ 速川の瀬に坐す『瀬織津比売』と言ふ神 大海原に持ち出でなむ 此く持ち出で往なば 荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百會に坐す 『速開都比売』と言ふ神 持ち加加呑みてむ 此く加加呑みてば 気吹戸に坐す『気吹戸主』と言ふ神 根底國に気吹き放ちてむ 此く気吹き放ちてば 根國 底國に坐す『速佐須良比売』と言ふ神 持ち佐須良ひ失ひてむ 此く佐須良ひ失ひてば 罪と言ふ罪は在らじと」

要約すると、「(祓い清められた罪・穢れは)高い山、低い山の頂から落ちる川の急流の瀬にいる『瀬織津比売(せおりつひめ)』が、大海原に持って行ってくださいます。そうすると、大海原の沖合で、潮がいくつも渦巻く中にいる『速開津比売(はやあきつひめ)』という神様が、この罪・穢れを大きな口を開けて全て飲み込んで、海底へ沈めてくださいます。すると、根の国・底の国の出入り口にいる『気吹戸主(いぶきどぬし)』という神様が、根の国・底の国に息を吹きかけます。そうすると根の国・底の国にいる『速佐須良比売(はやさすらひめ)』という神様が、この罪・穢れを跡形もなく消滅させてくださいます。このように神々が消滅させてくださったのなら、罪という罪は一切存在しなくなります」となります。

このように、我々の罪・穢れは、山、川から海、海底、そして根の国・底の国という異界へ至り、そこで消滅し、なくなってしまうのです。この「大祓詞」を何度も唱えることで祓いの効果は高まり、言霊の力でより清められるといいますから、六月と十二月の「大祓い」以外でも唱えるといいでしょう。

なお、「大祓詞」に出てくる「祓戸大神」と、前述のイザナギノミコトの禊で生まれた神々ですが、江戸時代の国学者、本居宣長によれば下記のように関連付けられるといいます。
  • 瀬織津比売・・・八十禍津日神
  • 速開都比売・・・伊豆能売
  • 気吹戸主・・・神直日神
  • 速佐須良比売・・・須勢理毘売命(須佐之男命の娘)
これらはあくまで関連付けであり、同一神とみなすまでは至らないようですが、これでイザナギノミコトの禊と「祓戸大神」がきれいに繋がりました。

 

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祓戸大神を祀る神社

佐久奈度神社

瀬田川のそばにある神社で、祓戸大神を祀っています。瀬織津姫命、速秋津姫命、気吹戸主命、速佐須良姫命それぞれ色違いのカラフルなお札が人気で、知る人ぞ知るパワースポットとなっています。

住所:滋賀県大津市大石中1-2-1
アクセス: JR・京阪「石山駅」からバスで30分(「大石小学校前」下車すぐ)

ご祭神:瀬織津姫命、速秋津姫命、気吹戸主命、速佐須良姫命
ご利益:厄除け、祓い・禊

 

日比谷神社

古くは日比谷公園の大塚山に鎮座し、旅人を癒したことから「さば(旅泊)稲荷」、転じて「鯖稲荷」とも呼ばれました。

住所:東京都港区東新橋2-1-1
アクセス: 各線「新橋駅」から徒歩5分、ゆりかもめ線・都営大江戸線「汐留駅」から徒歩3分

ご祭神:豊受大神、瀬織津比賣大神、速開都比賣大神、気吹戸主大神、速佐須良比賣大神
ご利益:無病息災、病気平癒、厄除け、虫歯封じ

 

地主神社

修学旅行生にも大人気の、恋愛成就のパワースポットです。末社に祓戸社があり、「祓串(はらえぐし)」や「人形(ひとがた)」でお祓いをすることができます。

住所:京都府京都市東山区清水一丁目317
アクセス: 五条坂・清水道(きよみずみち) 各バス停から約10分

ご祭神:大国主命、素戔嗚命、奇稲田姫命、足摩乳命、手摩乳命、大田大神、乙羽竜神、思兼大神
ご利益:縁結び

 

検見川神社

縁結びで有名な神社です。由緒書きには記されていませんが、「祓戸大神」の末社があり、隠れた人気となっています。

住所:千葉県千葉市花見川区検見川町1-1
アクセス:京成千葉線「検見川駅」から徒歩1分、JR総武線「新検見川駅」から徒歩6分

ご祭神:伊弉冉尊、素盞嗚尊、宇迦之御魂神
ご利益:縁結び、八方除け、方位除、方災除、厄除、商売繁昌

 

浦嶋神社

その名の通り、浦島太郎の伝説が残る神社です。創建は古く、平安時代までさかのぼります。

住所:京都府与謝郡伊根町本庄浜191
アクセス: 京都丹後鉄道宮豊線「天橋立駅」から丹海バスで75分(「浦嶋神社前」下車すぐ)

ご祭神:浦嶋子、月読命、祓戸大神
ご利益:縁結び、長寿、漁業、航海、農業、牛馬、養蚕

 

水野社

創建は100年前か700年前かはっきりとはわからない、謎めいた神社です。

住所:愛知県名古屋市中村区則武2丁目17-11
アクセス: 各線「名古屋駅」または地下鉄東山線「中村区役所駅」から徒歩約12分

ご祭神: 祓戸大神
ご利益:厄除開運

 

まとめ

橋本ユリ
ここまで、イザナギノミコトの禊と「大祓詞」を中心に、「祓戸大神」について見てきました。


祓戸大神の四神が、知らずのうちに積もっていたり、降りかかったりする私たちの罪や穢れを、異界まで運んで消し去ってくれるというのはとてもありがたいお話です。現代の生活においても、よく「水に流す」「禊が済む」などと言いますが、これも日本人の原風景ともいえる世界観をよく表しているといえるでしょう。

繰り返しになりますが、六月と十二月の末には全国の神社で大祓いの行事が行われます。

茅の輪をくぐったり、白い人形(ひとがた)に息を吹きかけるというとピンと来る人も多いでしょうが、ぜひ、今度は神主さんと一緒に「大祓詞」を奏上してみてはいかがでしょうか。自分で何度も唱えるのは少し大変ですが、今はインターネット上に動画も多く上がっているので、聞くだけでも効果を感じる方が多いようです。気になった方は聞いてみてくださいね。

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