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神道専門家の羽賀ヒカル監修のもと、架空のキャラクターの
新米巫女の橋本ユリが、神社に関する知識をわかりやすく解説します。

火之迦具土神(ヒノカグツチ)神話。悲劇は誕生の始まり!

2019年10月18日

こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。

「火之迦具土神」を見て「ヒノカグツチ」と読めたら、日本古代の歴史に詳しい方だと思います。

ヒノカグツチは日本神話の中で、重要な役割を担っていました。日本創生の神話に登場し、イザナギ、イザナミの運命をも左右した、と言えるでしょう。

橋本ユリ
そんなヒノカグツチ。実はとても悲劇的な生涯をたどるのです。


それでは参りましょう!

火之迦具土神(ヒノカグツチ)は火の神様

火之迦具土神という漢字から想像できると思いますが、ヒノカグツチは火の神様です。両親は、イザナギとイザナミ。天照大御神から、地上を作るよう命じられた神ですよね。

高天原の記事もぜひ参照いただきたいのですが、いわゆる「国産み」の神話の続きから、ヒノカグツチも生まれるのです。(神産みの神話)

後ほど詳しく述べますが、ヒノカグツチはイザナミから、最後に生まれるのです。そして、ヒノカグツチが産まれたことによってイザナミが死んでしまい、ヒノカグツチもある神に、殺されてしまいます。しかも、そのことにより新たな神々が生まれる、というトラマティックな展開があるのです。

火は人の営みに欠かせないものでしたが、当時は火をコントロールすることも、難しかったのかもしれません。だからこそ、ヒノカグツチの神話は、日本書紀・古事記でも多くの文章を割いて描かれているのでしょう。

その影響もあり、様々な名前が記されています。

 

ヒノカグツチを表す名前

ヒノカグツチは記紀神話(古事記や日本書紀で綴られている、日本古代の神話のこと)に登場するので、名前もいくつかあります。

古事記においては「火之迦具土神」と表され、日本書紀では「軻遇突智神(カグツチ)」となっています。
別名としては「火之夜芸速男神(ひのやぎはやおのかみ)」「加具土命(カグツチ)」(古事記での記述)、日本書紀では「火産霊神(ホムスビ)」と書かれています。

火之迦具土神の意味するところは、「火の輝ける神聖なる神」とも言われています。「迦具」が輝く・嗅ぐ、土は命の源である大地を現しており、それが聖なるものであることから、上記の解釈に結びつきます。
火之夜芸速男神から、ヒノカグツチが男神であったことが解りますし、火産霊神は、火を生んだ神様、ととらえることができますよね。

祝詞においては「火結神(ホムスビノカミ)」とも表記され、他には、秋葉神社に祀られていることから、秋葉権現とも呼ばれています。
火の神様の、象徴的な役割を担っているからでしょうか、細かな表記・読みの違いを含めると、50以上の別名があるようです。

後ほどご紹介しますが、カグツチにまつわる神社は、多くあります。各地にヒノカグツチが伝わっていくときに、表記や読み方のブレが、生まれたのかもしれませんね。火という大切なものだからこそ、ご神格として、様々な神社に祀られているのでしょう。

 

ヒノカグツチのご神格

カグツチのご神格はもちろん、火の神様です。

そこから派生して、防火の神・鍛冶の神ともなられています。火の神であることから、鍛冶はもちろん、煮炊きや様々な物づくりにも火は使われるので、殖産興業の神、とされている場合もあります。

自然神の中でも特に重要な位置づけとなっており、全国各地にヒノカグツチを祀る神社があることからも、大切な神様であることは、間違いありません。

 

ヒノカグツチのご利益

ご神格から、防火・防災のご利益があるとされています。

海外と違い、日本の家は木でできています。そのため、ひとたび火事が起ってしまうと、甚大な被害が出てしまうのです。江戸時代などでは、たびたび大火に見舞われることがあり、火除けの護符として使われたりもしました。火を使う場所、台所や厨房でも、火除けの護符が祀られていることもあり、転じて家内安全のご利益もあるとされています。

また、火はエネルギーの象徴でもあることから産業発展、広い意味でとらえて、金運のご利益もある、とする神社もあります。

火は力の象徴でもあるので、その土地を守護するとも、考えられていました。
ヒノカグツチを崇めることにより、火の良いところを引き出し、災害を起こす部分を防いでもらう。恐れられもしているが、とても頼りになる神様といったところでしょう。

火は物を燃やし灰にすることから「浄化」の意味合いもあり、火渡りの儀式などで、それが表現されています。「火を渡ることにより、古い自分を消滅させて浄化し、新たな自分に生まれ変わる」そんな願いが込められているのだ、と思います。

それでは、これだけ大切なヒノカグツチは、どのように生まれてきたのでしょうか?その神話を、たどってみましょう。

 

ヒノカグツチ(火之迦具土神)の神話

橋本ユリ
ヒノカグツチの神話は悲劇と再生、発展の神話だと思います。とても象徴的な意味合いも含まれていると個人的には感じます。


ヒノカグツチの誕生(神産みの神話)

イザナギとイザナミがドロドロの地面を固め、島を作りそこに舞い降りてたくさんの陸地を作りました。
しかし、それだけでは人々が生活していくことはできません。イザナミは人々を守るための神や、風・木・土などの神様を産みました。

大事忍男神(オオゴトオシオノカミ)がまず生まれ、ついで家宅六神と呼ばれる、家を守る神様を産みます。(イハツチビコノカミ・イハスヒメノカミ・オホトヒワケノカミ・アメノフキオノカミ・オホヤビコノカミ・カザモツワケノオシヲノカミ)

次に海の神様である、オホワタツミノカミが生まれます。他にも木の神であるククノチノカミ、草の神であるカヤノヒメノカミ等々、多くの神様がイザナミから生まれたのです。

イザナミから最後に生まれたのが、ヒノカグツチでした。ヒノカグツチは火の神様だったので、生まれてくる時から火をまとっており、イザナミは産道に、大やけどを負ってしまうのです。

イザナミは、のたうち回って苦しみました。おう吐し、小便や大便も垂れ流してしまう、重傷でした。

このとき、吐いた物からカナヤマビコノカミ・カナヤマビメノカミという鉱山の神が生まれ、大便からは土の神、小便からは水の神が生まれました。

イザナギは一生懸命イザナミの看病をしますが、まもなくイザナミは死んでしまいます。嘆き悲しんだイザナギは涙を流して悲しみますが、この涙から、モナキサワメノカミが生まれます。

ヒノカグツチが生まれることによって、加速度的に神様が生まれていく様は、火を初めて手にした人々が、急速な発展をとげることを意味しているように思われます。

とはいえ、自分が生まれることによって、母が死んでしまう、そんな悲劇が起ってしまったのです。

 

ヒノカグツチの死と神々の誕生

イザナギはどうしてもイザナミを諦めきれずに、イザナミを黄泉の国まで追いかけていくのですが、それは別の記事で述べております。

イザナギの悲しみは癒えず、次第にイザナミを死に追いやった、ヒノカグツチへの憎しみが湧いてきます。
そしてとうとう、イザナギはヒノカグツチを、十拳剣で斬り殺してしまうのです!

剣の先から岩に滴り落ちた血からイハサク・ネサク・イハツツノヲという神様が生まれました。
剣の持ち手の部分までたれて、そこから岩にしたたり落ちた血でミカハヤヒ・ヒハヤヒ・タケミカヅチが生まれます。

ちなみに、タケミカヅチは天照大御神の命を受け、国譲りの使者としてオオクニヌシのもとに赴く神様です。その際に行われた力比べは相撲の起源とも言われています。

また、ヒノカグツチのご遺体からも神様が生まれます。

頭はマサカヤマツミノカミ、胸はオドヤマツミノカミ、腹からはオクヤマツミノカミ、左手はシギヤマツミノカミ、右手はハヤマツミノカミ、左足はハラヤマツミノカミ、右足はトヤマツミノカミ、性器からはクラヤマツミノカミです。
つまり、八柱の神が生まれるのです。

橋本ユリ
ヒノカグツチが生まれ、お亡くなりになることによって、多くの神様が生まれるのですね。まさに再生の物語です。ヒノカグツチを殺す、ということは、もしかしたら「火をコントロールできるようになる」ことを意味しているのかもしれませんね。


イザナミの吐しゃ物などから神々が生まれることも、非常に暗示的です。火によって鉱物が溶かされて出てくる、大便から土の神は、もしかしたら焼き畑農業が、関係しているのかもしれません。
火が形を変えて、大切なものに生まれ変わる、それを表現したかったのかもしれませんね。

別の観点からは、親子の関係性の暗喩ともとれるでしょう。あくまで私見ですが、母親は命をかけて子供を産む、そこに魂が受け継がれる、という考えもあるかもしれませんし、父が子を殺すということは、子供(特に男の子)にとって父親はライバルであり、越えなければならない壁、という意味なのかもしれません。

少し横道にそれてしまいましたので、話を戻します。

それでは、神々が生まれるもとともなったヒノカグツチは、どのような神社で祀られているのでしょうか?

 

ヒノカグツチ(火之迦具土神)を祀る神社

ヒノカグツチを祀る神社としては秋葉神社、愛宕神社など多数あります。

面白いところでは、大分県別府市にある火男火売神社(ほのおほのめじんじゃ)です。鶴見岳には男嶽と女嶽という峰があるのですが、その峰を神聖なものとし、それぞれ火男・火売という2柱神として祀っています。鶴見岳の噴火を鎮めたとも言われているようです。

秋葉神社は秋葉山本宮秋葉神社(静岡県浜松市)を中心として全国に500社以上あります。
秋葉山本宮秋葉神社の火祭りは毎年12月15日と16日に行われ、火の力によって罪や穢れを浄化する祭事です。防火だけでなく洪水などの防災、様々な厄除けなどの願いを込めてとり行われます。
弓の舞・剣の舞・火の舞があり、厳かで迫力のある舞は、気持ちを自然に、クリアにしてくれるでしょう。

東京都台東区にある秋葉神社では毎年11月6日、火渡りの神事が行われます。燃えている炭火の上を歩くことにより、身を清め厄災を祓うと言われています。小さな子供も参加できる神事なので、ご家族で体験してみるのも、いいかもしれません。ちなみに、この秋葉神社は東京の「秋葉原」の地名の由来ともなっています。

余談ですが、火渡りが危ない、火傷をするという話も聞かれますが、現在一般参加者が渡るときには、鎮火して人肌程度の温度になってから行われるので、大丈夫です。(修行の場では、もっと熱い場合もあるのかもしれません)

愛宕神社も全国各地に800社以上あると言われており、その総本社が京都市にある愛宕神社です。実は、この愛宕神社ではイザナギ・イザナミも祀られているのです。ヒノカグツチを殺したイザナギ、ヒノカグツチを産んだことによってお亡くなりになったイザナミも祀られているのは、めずらしいですね。

9月には出世の石段祭があり、御神輿が石段を上り下りする様は、とても勇ましいものがあります。
愛宕神社のご利益は防火防災・商売繁盛・縁結びのほかに、印刷、コンピューター関係があることは、ユニークですね。

他にヒノカグツチを祀る神社は下記の通りです。(ほんの一部です)
  • 北海道 札幌八幡宮(北広島市)
  • 青森県 大覚院熊野神社(むつ市)
  • 岩手県 日高神社(奥州市)
  • 秋田県 唐松神社(大仙市)
  • 埼玉県 野々宮神社(狭山市)
  • 群馬県 大胡神社(前橋市)
  • 東京都 秋葉神社が新宿区、台東区、墨田区にあり、愛宕神社が江東区にあります。
  • 神奈川県 愛宕神社の他に天照大神(横浜市)、大戸神社(川崎市)などがあります。
  • 長野県 皇足穂命神社諏訪社(長野市)
  • 三重県 ヒノカグツチにまつわる神社が多くあります。伊賀市、松坂市を中心に陽夫多神社・田守神社・射手神社・真木山神社・石前神社・須加神社など。
  • 香川県 神野神社(丸亀市)
  • 佐賀県 佐嘉荒神社(佐賀市)他に愛宕神社もあります。
  • 大分県 先ほどご紹介した火男火売神社の他に、柁鼻神社(宇佐市)貴船神社(宇佐市)や愛宕神社もあります。
全てをご紹介することはできませんが、このように全国各地に祀られていることは確かです。

 

まとめ

ヒノカグツチ、火の神。エネルギーの象徴でもあり、時として火の力は、人を殺めてしまう恐怖の対象。
だからこそ、神話の中で火を神聖なものとし、崇拝するだけでなく恐ろしいものでもあると表現したかったのではないでしょうか?イザナミの死や、イザナギによるヒノカグツチの殺害、血やその体から生まれた神々。

橋本ユリ
世界中で火は崇められ、信仰の対象となってきましたが、この日本神話ほど、火の神に対する表現が豊かなものは、他に見られないかもしれません。

古事記や日本書紀に記された神話には、数々の謎と深い喩え(たとえ)が隠されているのかもしれませんね。

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