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神道専門家の羽賀ヒカル監修のもと、架空のキャラクターの
新米巫女の橋本ユリが、神社に関する知識をわかりやすく解説します。

【八上姫】因幡の白兎に導かれた愛!大国主命との恋愛の行く末は?

2019年12月11日

こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。

みなさんは出雲の神話「因幡の白兎」のお話を聞いたことがあるでしょう。
海岸で毛をむしられて泣いていた白兎を、通りかかった神が治す方法を教えてあげると、傷は癒えて毛が元通りに生えてよかった、というのが大筋です。

でも白兎が毛をむしられた原因が嘘をついたためで、嘘をつくと酷い目に遇うという、いわゆる教訓のように使われていた記憶があります。

白兎は神に感謝し、二度と嘘はつかないと言いました、という終わり方でしたが、このお話はほんの一部に過ぎません。
実はこの助けた神・大国主神(オオクニヌシ)と因幡の美しい女神・八上姫(ヤガミヒメ)を結ぶきっかけとなった出来事だったのです。

白兎がつくった出逢いのあとにあったのは、思いもかけない数々の出来事。
美し過ぎるがゆえに降りかかる大きな転機、それは八上姫にとってどのようなことなのか。

橋本ユリ
今回は八上姫について詳しくお話していきます。
八上姫はどのような女神なのか、神話で語られている生涯、そして祀られている神社も紹介します。


それでは参りましょう!

八上姫(ヤガミヒメ)とは




八上姫とはどのような女神なのか、名称や出生など詳しくみていきます。

  • 全名 「古事記」 八上比売(ヤカミヒメ)・八上姫(ヤガミヒメ)

  • 別名 「先代旧事本記(せんだいくじほんぎ)」 稲羽八上姫(イナバヤガミヒメ)


因幡は今の鳥取県で、その当時の八上郡(やがみごおり)は12郷を有する因幡国内最大規模の郡で、式内社も並小ながらも19座もありました。
八上姫はこの郡家の姫であったため、この土地に八上姫の名がついたのでは云われています。
郡家の所在地は万代寺遺跡(今の八頭町)のとされるほかに、西ノ岡遺跡も一時期は郡家であったという説もあり、八上郡がいかに大きく力を持っていたかがわかります。

八十神が因幡に向かったのは、八上姫が遠方からでも求愛したいほどの絶世の美女であり、さらに国内最大の郡家の出身であったからでしょう。

因幡の白兎の導きで、八上姫は大国主神と結婚はしますが、正妻・須勢理姫の嫉妬から逃れるために因幡に戻り、その途中授かった子を産み、木の股に残して帰っていきます。

その後、八上姫は出雲から因幡に戻ってから結婚したという話はありません。
しかも因幡地方では、女性でありながら八上姫を統率者であったように扱っていますし、八上姫を祀る売沼神社(めぬまじんじゃ)の千木は、上が尖った男神を表す形状になっています。

八上姫の神祇は大国主神と結婚していることからも出雲系(国津神)なのですが、因幡地方の神社の圧倒的に伊勢系(天津神)が多いことからも、因幡は伊勢系の傘下にあったと考えられます。

産んだ子が木俣神(キマタノカミ)となり、民が請けて住み着き亡くなった地が出雲と因幡の中間点の米子でした。
そこに木俣神を住まわせておけば、大国主神も八上姫も子供に会いに行くということで繫がりができ、関係を維持することで出雲系でありながらも、伊勢系とも関係が持てる環境を維持していたと考えられます。

素戔嗚尊(スサノオ)の存命中は出雲が最大勢力でしたが、死後は徐々に求心力が衰え、伊勢が席巻を始めていきます。
国譲りにより伊勢系の単独権力が確立しますが、それまでの間は出雲と伊勢の両睨みをすることで、どちらにでもつけるようにしていたのです。

八上姫は須勢理姫の嫉妬が怖くて出戻りし、しかも途中で子供を捨ててきた非情な姫とされていますが、結果として因幡を守る手立てとなり、地元では八上郡を統率した女神として祀られています。

 

神格



  • 恋愛の神様


 

ご利益



  • 安産

  • 子宝

  • 病気平癒


 

八上姫(ヤガミヒメ)の神話




因幡の白兎のお話は、まだ大国主神(オオクニヌシ)が国造りを始める前のことです。
この頃の大国主神は大穴牟遅神(オオナムチ)と呼ばれ、大勢の兄弟神(八十神)の末っ子で兄弟から虐げられていました。
その弱い立場の大穴牟遅神がどうして国造りをするほどの凄い神になったのか、そのきっかけが八上姫なのです。
因幡の白兎に導かれた二人の出会いとその顛末を、詳しくお話ししていきましょう。

 

はじまりは因幡の白兎


大穴牟遅神(オオナムチ)には八十神(たくさんの神)の異母兄がいました。
その八十神は因幡国の八上郡に住む美しい姫・八上姫(ヤガミヒメ)に求婚するため、荷物持ちとして末っ子の大穴牟遅神を連れて行きます。
全員の荷物を背負わされた大穴牟遅神は八十神にどんどん遅れてしまいます。

八十神が気多の岬につくと、毛皮を剥ぎ取られて丸裸になった白兎が倒れていました。
八十神は白兎にこう言います。「この身を治すには、海水を浴びて風にあたり、高い山で寝ていれば治る」と。
その通りにした白兎の皮膚はひび割れ、痛み苦しんで泣き伏せました。

そこへ遅れた大穴牟遅神が通りかかり、白兎が泣いている理由を聞きます。
沖ノ島にいた白兎は、ここに渡る手立てがなかったため、海の和邇(ワニ)にどっちの同族が多いか数えたいのでここまで並んでくれたら跳んで走りながら数えましょうと提案すると、和邇は同意し仲間を連れて並びました。
和邇の上を跳んでうまく渡り、地に降りる間際、実はお前たちをだましたと告げると、最後の和邇が怒って身包みを剥ぎ、痛くて倒れていたところに八十神がきて、もっと酷い有様になったことを話しました。

大穴牟遅神はこう言います。「川の水で身を洗い、ガマの穂の花粉を敷いて寝ていれば元の肌に必ず戻る」と。
その通りにした白兎は毛が生えてきれいな体に戻りました。

 

大穴牟遅神を選んだ八上姫


白兎は大穴牟遅神にこう言います。
「八上姫は八十神を選ばず、袋を背負っているあなたを選びます」と。

この白兎の正体は兎神だったのです。

因幡に着いた八十神のプロポーズに対し八上姫はこう言います。
「私はあなた方の言うことは聞きません。大穴牟遅神に嫁ぎます」と。

怒った八十神は大穴牟遅神を殺そうと一致団結します。
こいつがいなければ八上姫はプロポーズを受けてくれるだろうという浅墓な考えで。

 

八十神の酷い仕打ち


八十神は伯耆国(ははぎのくに)の手間の山麓で大穴牟遅神を待ち、こう言いました。
「赤いイノシシを追ってくるから捕まえろ。捕まえられなかったらお前を殺すぞ」と。
八十神はイノシシに似た石を真っ赤に焼いて落とし、それを捕まえようとした大穴牟遅神は大やけどで死んでしまいます。

大穴牟遅神の死を嘆き悲しんだ母・刺国若比売(サシクニワカヒメ)が神産巣日神(カミムスビ)に救済を願い出ます。
神産巣日神は蚶貝比売(キサカイヒメ)と蛤貝比売(ウムカイヒメ)に託し、貝の粉の薬(母の乳汁)を患部に塗ったところ、大穴牟遅神は見事生き返りました。

しかし八十神の仕打ちは止まらず、今度は山で大木を切り倒して楔(くさび)を打って開き、その間に大穴牟遅神を誘い、入った途端に引き抜いて挟み死なせました。
今度は母・刺国若比売の力で大穴牟遅神を蘇らせますが、このままでは何度蘇らせても殺されてしまうと危惧し、紀国の大屋比古(オホヤビコ)の所へ避難させました。

 

哀しい運命に翻弄されて


大穴牟遅神は大屋比古の元でアドバイスを受け、根の堅州国(ねのかたすくに)の素戔嗚尊(スサノオ)の元へ行き、すぐに素戔嗚尊の娘・須勢理姫(スセリビメ)と出会い、恋に落ちて結婚してしまいます。

娘の一目ぼれ婚に怒った素戔嗚尊は大穴牟遅神に次々と試練を与えますが、須勢理姫の助けで乗り切り、最後には駆け落ちをしますが、その時に素戔嗚尊から受けた武器で八十神を追い払い、大国主神(オオクニヌシ)となりました。

戻った大穴牟遅神は、約束通り出雲に八上姫を呼び寄せ、夫婦の契りを結びます。
幸せだったのもつかの間、正妻の須勢理姫があまりにも嫉妬深かったため、怖くなった八上姫は最初の妻であるにもかかわらず、国に逃げ帰ってしまいます。

契りを結んだ時に命が宿っていましたが、途中その子を産んで木の股に挟んで、因幡に帰ってしまいました。
その子は木俣神(キマタノカミ)、別名・御井神(ミイカミ)となりました。

兎神が導いた愛でしたが、八十神の嫉妬と須勢理姫の嫉妬に翻弄され、その愛は長く続きませんでした。
その後、八十姫は因幡の地を治めたと伝えられています。

一方、大穴牟遅神は大国主神となりましたが、超プレーボーイで八千矛神(ヤチホコノカミ)とも呼ばれ、最終的には全国に180人も子供を授かりましたが、結局は須勢理姫と出雲で末永く暮らしました。

 

八上姫(ヤガミヒメ)にまつわる地域と産物


八上郡があった地であり、八上姫が生まれた地とされる鳥取市周辺には、八上姫を祀る場所が多くあります。
古事記にはない、八上姫の言い伝えを交えながら、そこから生まれた産物も一緒に紹介していきましょう。

 

曳田川八上姫公園




八上姫公園は、八上姫が生まれた地とされた賣沼神社(めぬまじんじゃ)や八上姫が埋葬されているといわれる嶽古墳(だけこふん)があり、曳田川周辺16ヘクタールを八十姫のロマンを伝える場所として、河原町が創設しました。

嶽古墳は売沼神社のすぐ裏山・簗瀬山に築造された前方後円墳(全長50m、幅19m、高さ4m)で、この近隣地域で最大規模です。

公園内に【紙芝居「八上姫」の小径】という、13個の自然石に取り付けられた創作紙芝居が作られましたが、古事記の内容とはかなり違うようです。
地元の方たちがこんなロマンがあってもいいのでは、という思いが込められているようです。

所在地:鳥取県鳥取市河原町曳田
アクセス:JR鳥取駅下車 日ノ丸自動車バス南部幹線乗車→河原町総合支所前」下車徒歩28分

 

旅館「湯元湯の川」




日本三美人の湯と名高い島根県出雲市の「湯元 湯の川温泉」は、八上姫が大国主神を慕ってはるばる出雲へ訪れた際、南の谷あいに湯が沸き出ているのを見つけ、この地で旅の疲れを癒し、いっそう美人神になられたといわれています。

天然温泉100%の源泉かけ流し、ナトリウム・カルシウム・硫酸塩・塩化物泉で、保湿によいメタケイ酸を含むのでお肌がツルツルすべすべになると評判になり、出雲詣に立ち寄る観光客も多いようです。

入口には「八上姫神社」があり、八上姫を祀っています。

住所:島根県出雲市斐川町学頭1329-1
アクセス:JR荘原駅から徒歩15分

 

白兎神社(はくとじんじゃ)




因幡の白兎は兎神だったと伝えられる神社で、かつては兎の宮・大兎大明神・白兎大明神とも呼ばれていました。鎮座地は身干山で、因幡の白兎が身を乾かしたとされ、境内には白兎が体を洗った御身洗池があり、どんな天候でも水位が変わらない不滅不増の池と呼ばれています。

近くには兎が体を洗ったという池ガマや白兎海岸があり、海岸に西寄りには白兎神社に合祀されている白兎川下神社、すぐ沖には白兎がいたとされる淤岐島(おきのしま)が見えます。

鳥居の前には大国主命と白兎の石像や、二の鳥居をくぐってすぐ左手には大国主命と八上姫と白兎の「砂像」があり、あちこちで「兎」を見ることができます。
縁結びのご利益もあり、御朱印や兎のお守りを授与する女性の参拝者も多く訪れる神社です。

住所:鳥取県鳥取市白兎603
アクセス:JR鳥取駅からバスで40分「白兎神社」下車 道の駅「神話の里白うさぎ」

御祭神:白兎神 合祀:保食神
ご利益:特別な人との縁結び・皮膚病平癒・傷痍平癒

 

有限会社八上姫


創業平成17年2月1日、レディース服の企画・製造・販売・卸のアパレルメーカー。
オリジナルブランド「しのぶ」は、天然染料を職人の手作業で丹念に染められた商品で、「柿渋染」「香雲染」などの多彩な技法により、他にない独特の風合いが楽しめます。

本社の2Fにはショールームがあり、最新アイテムを取り揃えていますので、手に取ってご覧になれます。
また公式HPからのオンラインショップでも購入できますし、Twitterやインスタでも紹介しています。

有限会社 八上姫
所在地:鳥取県鳥取市源太24-2
電話 0857-32-7739
営業時間10:00~17:00 休業日 土・日・祝日

 

八上姫(ヤガミヒメ)を祀る神社


賣沼神社(めぬまじんじゃ)




鳥取市の河原駅の西4㎞ほどの曳田に鎮座する賣沼神社の創設は不明ですが、八上姫を祀る神社として地元で崇敬されています。
社名は「賣沼」ですが「比賣沼」が本来の社名で、別名は八上賣神社・西日天王です。

大国主命が恋文を書いた場所が倭文(北4㎞)、大国主命が持っていた袋を捨てた場所が袋河原(北2㎞)、二神が結婚された場所が円通寺(北3.5㎞)と、二神の名残が多くあります。

対岸の簗瀬山中腹に嶽古墳があり、この地一帯を八上姫の伝説地として、河原町が八上姫公園を創設しました。

住所:鳥取県鳥取市河原町曳田字上土居169
アクセス:JR鳥取駅下車 日ノ丸自動車バス南部幹線乗車→河原町総合支所前」下車徒歩28分 八上姫公園隣接

御祭神:八上姫神 合祀:伊弉册命(イザナミノミコト)・保食神(ホショクカミ)・建御名方神(タケミナカタノカミ)・高龗神(タカオカミ)・闇御神(ヤミオカミ)
ご利益:縁結び・恋愛成就・安産祈願

 

八上姫神社(やがみひめじんじゃ)




出雲市の旅館「湯本湯の川」の敷地内に鎮座する八上姫神社は、八上姫が出雲に嫁ぐ時の道すがらで見つけた温泉といわれ、その由縁からここに社を建てて祀っています。

神社の近くには湯を浴びる八上姫像もあり、湯元湯の川ではハートの絵馬・縁結びの絵馬(2枚1組800円)を授与しています。

住所:島根県出雲市斐川町学頭1329-1 湯本湯の川前
アクセス:JR荘原駅から徒歩10分

御祭神:八上比賣神
ご利益:縁結び・恋愛成就

 

御井神社(みいじんじゃ)




出雲の斐川に鎮座する御井神社は、八上姫が大国主命との間にできた子を産んだ後、木の股に挟んだことで木俣神となり、その誕生にまつわる地として祀られています。

神社の近くには生井(いくい)・福井(さくい)・綱長井(つながい)の三つ井戸があり、その井戸水を木俣神の産湯として使ったことから三井戸が御井になったとされています。

木俣神が無事に生まれ育ったことから、安産の神または水神の祖といわれ、水の守護神とされています。
また井戸の神様として、五穀豊穣を願う民衆にも篤い信仰をあつめました。

住所:島根県出雲市斐川町直江2518
アクセス:JR直江駅入口・リムジンバス出雲空港線→小原下車徒歩23分

御祭神:御井神(ミイノカミ) 井戸の神様で水利を司る神
ご利益:水にまつわること・五穀豊穣・安産子宝・母子の長寿・病気平癒

 

まとめ


因幡の悲運の女神、八上姫については古事記ではあまり語られていません。

大国主神が国造りを成す前の因幡の白兎の神話で登場し、八十神がごそって求婚する絶世の美女神です。
しかし白兎の兎神が導いた出会いだったにも関わらず、添い遂げることは叶いませんでした。

出雲を逃げ、子供を途中で産んで因幡に帰ってしまった気弱で非情な母とされていますが、地元ではその後因幡を守り通した守護神として崇められています。

また、周辺には大国主命とのゆかりの地が多くあり、結びの神でもある白兎を巡る地にも八上姫の存在は欠かせませんでした。

兎神が導いた縁も、大国主命が素戔嗚尊の娘・須勢理姫に出会っても八上姫を大事に思えば、成就することができたのかもしれません。

橋本ユリ
八上姫は神秘の女神として、地元でも再注目されています。
古事記では語りつくせない守護女神、ゆかりの地を訪ねることで新しい発見があるかもしれませんよ!


これらの記事も合わせて読むと、開運の秘訣がわかります。

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