神社チャンネル

神道専門家の羽賀ヒカル監修のもと、新米巫女の橋本ユリが、
神社に関する知識をわかりやすく解説します。

伊邪那美(イザナミ)

2017年9月6日 2017年09月06日

国も神も生み、日本を作った国母神です。黄泉(よみ=死者の国)の女神でもあり、生と死の二つの顔を持つスーパー女神さま。イザナギの妹であり愛妻です。

神話


「国生み神話・神生み神話」「黄泉下り」の2つの神話が有名です。

古事記「国生み・神生み神話」イザナミの語り


天と地が初めて現れ、天の高い所にある高天原へ神々が生まれたとき、まだ地上には大地がありませんでした。
「地上はまだブニョブニョ、フワフワだなあ~」
そこで、神々は最後に生まれた私たち兄妹神、イザナギとイザナミへ天の沼矛(あめのぬぼこ)を渡して
「あの漂うものを固めて、国を作っておいで」とお役目を与えて下さいました。

そこで私たちは、天と地の境目にある天浮橋(あまのうきはし)に行きました。
イザナギ兄様が矛を突き降ろしてかきまぜると、渦潮ができてよい音がしました。

「コオロ コオロ・・・・」

矛を引き上げると、ポトリ、ポトリ・・・。塩がしたたり落ち、オノゴロ島(淡路島)ができました。

「イザナミ、あの島にマイホームを建てよう!」
私たちは島に、天御柱(あめのみはしら)という天と地をつなぐアンテナになる、太く高い柱をたて
八尋殿(やひろでん)という、立派な神殿をつくりました。

神殿に入ると、イザナギ兄様が言いました。
「イザナミ、地上に降りて体を持つことになったけど、どんな感じ?」
ストレートな質問で、ちょっと恥ずかしかったのですが、私はお答えしました。
「ほとんど出来上がっているけれど、一か所だけ、できあがっていないところがあるのです。」
イザナギ兄様がおおらかな声で言いました。
「僕もほとんどできているんだけど、できすぎちゃった部分があるんだよ。そうだ、ぼくのできていないところと、君のできていないところを合わせたら、国が生まれるんじゃないかな?
「それはいい考えですね」私もお答えしました。

「じゃあね、この柱をイザナミは右から、僕は左から回って、出会う事にしよう!」
ドキドキしながら歩いていた私は、大好きなお兄様の姿が見えたとき、思わず声をあげました。
「なんて男らしい方でしょう!」
「ああ、なんて愛らしい女性なんだろう!」お兄様も言いました。

その後、私たちは身を寄せ合い、夫婦神になりました。

しかし、初めに私が生んだ子は、「蛭子(ひるこ)」だったのです。
体が不自由で育ちそうにない子どもだったので、すぐに葦の船に入れて流しました。
次に生まれたのも「淡島(あわしま)」という体の弱い神様

私たちは、悲しくて困り果て、高天原の神様に相談しましたら、フトマニ占いをして下さいました。

女神が先に声をかけたのが良くないようだ。もう一度やりなおしてごらん」

私たちは、オノゴロ島に戻り、イザナギ兄様が先に声をかけてから、営みをしました。
そうしたら、今度は次々と国が生まれたのです。

先にできた淡路島の他に、

  • 四国

  • 沖ノ島

  • 九州

  • 壱岐島

  • 対馬

  • 佐渡島


を産み、
そしてついに本州が生まれました!
最初に8つの島が生まれたので、日本を大八島国(おおやしまのくに)といいます。
さらに私たちは6つの島も生みました。

そうやって、イザナギ様と私イザナミは、日本の国を生んだのです。

その後、私たちは、日本の国を守るたくさんの神々を生みました。

  • 家を守る神

  • 風の神

  • 木の神

  • 野の神


といった、自然にまつわる神々が生まれ、私の子どもの神々もさらに水や土の神々を生んで、日本の国にはたくさんの神が生まれました。

しかし。
火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)という火の神を生んだとき、私は大やけどをしてしまったのです・・・!
私が苦しんで吐いた物や、尿や便からも神々は生まれます。
最後の力を振り絞って、できるだけ多くの神を生んでさしあげたかったのです。

イザナギ様が、大声で泣き叫ぶのを聞きながら、私は黄泉(よみ=死者の国)に下って行きました。

古事記「黄泉下り」イザナミの語り


一人泣きながら黄泉の国に来た私を、黄泉の神々が慰めてくれ、食べ物を出してくれました。黄泉の食べ物を食べることを黄泉戸喫(よもつへぐひ)と言い、これを行うことで正式に黄泉の住人になるため、次第に地上のことを忘れます。
イザナギ様のことを思うと悲しくて仕方ない私は、その食べ物を口にしました。

ある日。黄泉にある家の扉の向こうから、懐かしい声が聞こえてきたのです。
「イザナミ、そこにいるのかい?君と作った国はまだ完成していないよ。一緒に帰ろう!」

なんということでしょう!こんなところまでイザナギ様は来てくださったのです。
「イザナギ様、もう遅いのです。私は黄泉の食べ物を食べてしまいました。生きかえることはできません。でも、黄泉の神々に何とかならないか相談してきます。その間お願いですから、決して私の姿を見ないでくださいね!

黄泉の神々は、ルールを曲げるわけにはいかないと、聞き入れてくれません。
でも、愛しい声を聞いてしまったら、私も帰りたくてたまらない。
一生懸命、黄泉の神々を説得していたとき、

「うぎゃ~~。なんだこれは!」

とイザナギ様の声。
家に入り、櫛の歯に火を灯して、私の姿を見てしまったのです!

あんなに、あんなに、頼んだのに!
私の体は、腐ってウジがわき、土に還る寸前だった。
愛しい方だからこそ、見て欲しくなかった!


恐ろしいものを見たように、逃げていくイザナギ。
こんなに恥ずかしい思いをさせるなんて、許せない!

私は、黄泉醜女(よもつしこめ)という魔物にイザナギを追わせました。
イザナギが、つる草の飾りを投げ捨てると葡萄がなりました。
魔物は葡萄を食べつくして、イザナギを追いかけます。
さらにイザナギが櫛を投げるとそこからタケノコが生えました。
タケノコを魔物が食べている間にイザナギは逃げて行きます。

もう、黄泉醜女に任せておけない!
私は、8柱の雷神と黄泉軍(よもついくさ)に追いかけさせました。

イザナギは、桃の実を3つ投げてきます。桃は強力な魔除けの力がある実です。
黄泉の悪霊たちは、たまらず逃げ帰ってきました。

もう、誰も頼れない。私がいく!

イザナギ様は、私を見ると、必死の形相で、黄泉と地上の境である黄泉比良坂(よもつひらさか)を大岩でふせぎました。
私たち夫婦は、岩を間にはさんで向き合いました。

そして、私は信じられない言葉を聞きました。
イザナギ様は私を離縁すると言うのです!

そこまで私を嫌うのか! だから、見るなと言ったのに、約束を破ったのは誰?!
私は怒りと悲しみで、思わず呪詛を叫びました。

「愛しい夫よ、私はこれからあなたの国の人を、毎日、千人ずつ殺します!」

イザナギ様は、呪詛返しの言葉を放ちました。

「愛しい妻よ、それなら私は人間が決して滅びないよう、一日に千五百人生ませよう」

こうして、あんなに愛し合っていた私とイザナギ様は、永遠の別れをしたのです。

系譜


虚空から生まれた、神代七世の最後の兄妹神です。

名前の由来


イザナ→誘う(いざなう/さそう)
ミ→女性
イザナギとイザナミで、「お互いに誘いあう男女神」の意味

別名


「伊邪那美神」「伊邪那美命」「伊弉冉尊」(イザナミノミコト)

「黄泉津大神(ヨモツオオカミ)」「道敷大神(チシキノオオカミ)」は、ブラック・イザナミとしての別名です

ゆかりの地


最初にできたおのごろ島は、
兵庫県淡路市の絵島


とも、

南淡路市の沼島


とも言われます。

墓所の伝承地は、比婆山(島根県安来市)比婆山(広島県庄原死)です。

「出雲」という地名はイザナミの美称、稜威母(イズモ)からきたという説もあります。

祀られている神社


伊射奈美神社(阿波国美馬郡)


イザナミの名前を社名とする神社はここ一社です。あとは、イザナギと共に祀られています。もとは格式の高い神社でしたが、明治以降単なる村社に格下げされ、本殿の用地買収、村民も移動させられて、神社も移築されています。移転前の中島には行けなくなっています。何か訳ありげです。


伊弉諾神宮(兵庫県淡路市)


2人が最初に降りた島であり、イザナギが隠居所「幽宮」を構えて余生を過ごしました。


多賀大社(滋賀県犬上郡多賀町)


滋賀県一宮。イザナギ、イザナミが祀られています。「お伊勢参らばお多賀に参れ お伊勢お多賀の子(天照大神)でござる」と歌われました。


三峯神社(埼玉県秩父市)


景行天皇がイザナギ・イザナミを祀りました。


  • 筑波山神社(茨城県つくば市)

  • 神魂神社(島根県松江市)

  • 佐太神社(島根県松江市)

  • 花窟神社(三重県熊野市)


など

ご利益


イザナミの神格として、万物を生み出す生成力、死をつかさどる神、大地の母神という性格があります。そのため、御利益としては、

  • 安産祈願

  • 子宝

  • 延命長寿

  • 縁結び

  • 女子力アップ

  • 事業成功


などを御神徳とします。

 

【関連記事】

イザナギ(現在作成中)と一緒に活躍するので、神話がほぼ同じです。
イザナギとイサナミの神話には、「愛と憎しみ」、「生と死」という一対になった深いテーマがあります。

この記事をまとめた人

橋本ユリ
橋本ユリ
神社チャンネルのメインキャラクター。北極神社の新米巫女。2017年、神社参拝セミナーで羽賀ヒカルと出会い、日本人の良さと伝統を伝えていきたい!という思いから、この神社チャンネルサイトが始まりました。(という設定です。)

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