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トイレの神様!?穢れを浄化する烏枢沙摩明王のご利益とは?

2019年12月22日 2022年11月27日

こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。

「烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)」という神様を知っていますか?

聞き慣れない名前かもしれませんが、烏枢沙摩明王は私たちの身近なところに宿っています。

「明王様」というのは特定のものを守護する役割を持っており、その中でも烏枢沙摩明王は「便所を守護する神様」、つまり「トイレの神様」として知られています。

そのため、寺院の「東司(とうす)=トイレ」では、烏枢沙摩明王のお札が貼られていたり仏像が置かれていたり、何かしらの形で烏枢沙摩明王が祀られています。

今回の記事では、私たちのトイレを守護してくれている烏枢沙摩明王について、詳しく紹介させてもらいます。

それでは参りましょう!

うすさま明王(烏枢沙摩明王)とは


烏枢沙摩明王は密教における明王様です。真言宗・日蓮宗・天台宗・禅宗などで信仰されています。また、天台宗においては「五大明王」の一尊に数えられています。

トイレの神様として信仰される烏枢沙摩明王は、人間界と仏界の境界線を守護していると言われています。

炎の神とも言われる烏枢沙摩明王は自身の体から炎を出し、仏界から人間界へ侵入してこようとする邪気を全て炎で焼き払う役割を担ってくれています。これを火生三昧(かしょうざんまい)といいます。

また、仏尊にはそれぞれ「真言」という語句があります。烏枢沙摩明王の真言はこちらです。

・オン クロダノウ ウンジャク
・オン シュリ マリ ママリ マリシュシュリ ソワカ

烏枢沙摩明王には二種類の真言がありますが、どちらも意味はほぼ同じです。

烏枢沙摩明王の真言を唱えながらトイレ掃除をすると、金運アップや開運のご利益を得られる効果があると言われています。他にも宝くじが当たる確率が上がるという話まであります。

このように、烏枢沙摩明王には様々なご利益があるのです。

 

別名


烏枢沙摩明王には異なる漢字表記が複数あります。

・烏枢瑟摩
・烏蒭沙摩
・烏瑟娑摩

漢字の表記は寺院や宗派によって異なります。

また、烏枢沙摩明王は、元々は古代インド神話における炎の神様です。元の名は「ウッチュシュマ」または「アグニ」といいます。

ウッチュシュマというのはインドで「ぱちぱちと鳴る炎」といった意味合いがあります。他にも下記のような意訳があります。

・火頭金剛
・不浄金剛
・穢跡金剛

金剛とはダイヤモンドのことです。いずれも不浄なものや穢れを浄化して、ダイヤモンドのような輝きを持たせるといった意味があります。

日本で伝わっている「烏枢沙摩(うすさま)」というのは「ウッチュシュマ」を日本語の発音に直し、漢字を当てはめたものです。

 

ご神格


烏枢沙摩明王には「この世の不浄なものを浄化する力」があるとされており、昔から寺院の便所に祀られてきました。

古代においては、便所は怨霊や悪魔の入口だと考えられており、烏枢沙摩明王を祀ることで不浄なものが侵入してこないようにしたのです。

烏枢沙摩明王は、現代では「トイレの神様」と呼ばれ親しまれています。

 

ご利益


烏枢沙摩明王には様々なご利益があります。

・不浄なものを浄化する
・開運
・金運アップ
・下半身の病の治癒
・男児誕生

烏枢沙摩明王は炎の神でもあります。不浄なものを烈火のごとく浄化してくれるということで、浄化や開運のご利益があるとされています。

また、烏枢沙摩明王は「女性の胎内にいる女児を男児に変化させる力を持つ」と言われておりました。そのため、より多くの男児が必要になる戦国時代などは、武将たちからの篤い信仰を集めていました。男女平等化が進んでいる現代では、男児誕生のご利益はあまり有名ではないようです。

ご利益に預かるためには、烏枢沙摩明王のお札をトイレに貼るのがおすすめです。烏枢沙摩明王のお札は、トイレのドアや壁に貼るのが一般的です。

お札は烏枢沙摩明王を祀っている寺院などで購入できます。しかし購入できる寺院は限られているため、遠方で直接出向くのが難しい場合は、インターネットからの申し込みでお札を郵送してくれるところもあります。

他に、烏枢沙摩明王には紫陽花(あじさい)にまつわるおまじないがあります。

用意するものは、紫陽花1本と半紙が1枚と紅白の水引が1組です。

まず、半紙に自分の名前と年齢を書きます。書き終わったら半紙を紫陽花の茎に水引で括り付け、トイレのドアや壁などに逆さまにして吊り下げます。

このおまじないは、6月の6のつく日(6日、16日、26日)に行い、紫陽花は1年間トイレに吊り下げたままにしておきます。そしてまた6月の6のつく日を迎えたときに新しい紫陽花に交換します。

このような形で紫陽花をトイレにお供えすることで、烏枢沙摩明王が私たちを下半身の病気(婦人科系や泌尿器系)から守ってくれると言われています。

6月になったらぜひ紫陽花のおまじないを試してみてください。

 

うすさま明王(烏枢沙摩明王)の神話


烏枢沙摩明王の元になった、古代インド神話における「アグニ」の神話や伝説を中心に紹介させてもらいます。

 

火の神


古代インドにおいてアグニは「火の神」として崇められていました。炎は地から天へと昇るため、アグニは天界と地上を結ぶ神様だと言われています。

アグニは生まれた直後に両親を喰い殺し、更には自らの炎で両親の遺体を燃やし尽くしたという逸話があります。

アグニの姿は、真っ赤な身体に黄金の顎と歯を持ち、二つの顔に七枚の舌、そして炎のように燃える頭髪をしているとされています。

日本における烏枢沙摩明王の像は、炎のように逆立つ頭髪や、睨みつけるかのような恐ろしい顔つきはどれにも共通しています。また、片足を上げ、今にも何かを踏みつけそうな姿勢も共通しています。

しかし、腕の数が六本であったり四本であったり、ポーズが微妙に違っていたりと、容貌は像によって異なっています。

烏枢沙摩明王は民衆に親しまれる神様であったため、地域や宗派によって異なる姿が派生していったのだそうです。

 

消化の神


アグニは人間や動物の体内に消化作用をもたらすともされています。インドの伝統的な医学「アーユルヴェーダ」では、消化力のことを「アグニ」と呼んでいます。

アグニは食べ物を吸収し、栄養を行き渡らせ、人や動物の健康を守護し子孫繁栄の手助けをしてくれます。

アーユルヴェーダにおいては「アグニ(消化力)」を高めることが健康のための最も重要な手段だとされているのです。

では、アグニがなぜ「消化の神」と呼ばれるようになったのか、インドではこのような神話が伝わっています。

アグニは「神様として決して嘘をついてはいけない」という義務を課されていました。ある時、魔王に聖仙ブリグの居場所を聞かれたアグニは、その居場所を正直に話してしまいます。これに対し、ブリグは激怒しました。

そこでブリグはアグニに「不浄な食べ物」以外は口にすることができないよう呪いを掛けたのです。

しかしブリグは後に、アグニが神としての義務を守っただけだということや、アグニが口にする食べ物は先祖への捧げものだということを知ります。

ブリグは呪いを訂正し、アグニに浄化の力を与えました。こうしてアグニが口にする食べ物は全て浄化されるようになり、アグニは「不浄なものを浄化する力」を得たのです。

このような神話からアグニは消化の神様だと呼ばれるようになりました。

 

うすさま明王(烏枢沙摩明王)にまつわる場所


高岡山瑞龍寺


富山県高岡市にある「瑞龍寺(ずいりゅうじ)」では、烏枢沙摩明王の仏像を拝むことができます。瑞龍寺は国宝に指定されている非常に立派なお寺です。

季節ごとに催されるライトアップイベントはとても美しく人気が高いです。

瑞龍寺では烏枢沙摩明王のお札が販売されています。トイレのドアまたは壁に貼ることで、自宅で烏枢沙摩明王を祀ることができます。

瑞龍寺に赴くのが難しい場合は、公式ホームページから通販でお札を購入することも可能です。

住所:〒933-0863 富山県高岡市関本町35
アクセス:JR「高岡駅」より徒歩10分

 

郷ノ原観音祖聖大寺


福岡県にある郷ノ原観音祖聖大寺は、縁結びや安産のご利益がある寺院として有名です。こちらの寺院ではトイレに烏枢沙摩明王が祀られており、また、烏枢沙摩明王の像もあります。

郷ノ原は、山を守護する「山の神様」が祀られているとされ、修験道たちの修行の土地でした。現代では願望成就のお寺として親しまれています。

祖聖大寺でも烏枢沙摩明王のトイレのお札が販売されています。公式ホームぺージの通販から購入することもできるので、ぜひ見てみてください。

住所:〒811-2405 福岡県糟屋郡篠栗町大字大字篠栗84
アクセス:JR「城戸南蔵院前駅」より徒歩30分

 

竜吟山海雲寺


東京と品川区にある海雲寺でも烏枢沙摩明王が祀られています。

毎年3月と11月に「千躰荒神祭」というお祭りが催されます。こちらのお祭りではお札の授与や露店の設置などがされ、毎年大勢の参拝客で賑わいます。

烏枢沙摩明王のお札はいつでも購入できますので、近くに住んでいる方はぜひ足を運んでみてください。

住所:〒140-0004 東京都品川区南品川3-5-21
アクセス:京急「青物横丁駅」より徒歩2分

 

繖山山観音正寺


滋賀県にある観音正寺は「人魚伝説の寺」と呼ばれています。今からおよそ1400年前、聖徳太子によって建設されました。

本堂には立派な観音像がおかれています。また、寺院のトイレには烏枢沙摩明王のお札や像が設置されています。

人魚の尾の押印がしてもらえる御朱印は、他の御朱印と一風変わっていて人気を集めています。山の上からの景色は非常に美しいので、お近くに住んでいる人はぜひお参りに行ってみてください。

住所:〒521-1331 滋賀県近江八幡市安土町石寺2
アクセス:竜王ICまたは彦根ICより約50分

 

狸谷山不動院


京都にある狸谷山不動院は「タヌキダニのお不動さん」という通称で親しまれています。

こちらの寺院で祀られている狸谷不動明王は、あらゆる災厄から私たちを守護してくれます。交通安全や厄除けのご利益があります。

寺院のトイレでは烏枢沙摩明王が祀られており、また、お札を購入することもできます。こちらも通販でお札の販売をしています。

住所: 〒606-8156 京都市左京区一乗寺松原町6
アクセス:京都東ICより約30分

 

宝雲山明星院来振寺


岐阜県にある来振寺(きぶりじ)では、国宝の「五大尊像(ごだいそんぞう)」が祀られています。五大尊像とは「五大明王」のことで烏枢沙摩明王も含まれます。

他にも観音像や菩薩像など数多くの文化財を有しています。由緒の正しい立派なお寺なので、ぜひお参りに行ってみてください。

住所:〒501-0501 岐阜県揖斐郡大野町大字稲富397−1
アクセス:大野バスセンターより車で約5分

 

興國山大光院


名古屋にある大光院では、明王堂という別殿で烏枢沙摩明王が祀られています。下半身の病気治癒のご利益があるとして地域で親しまれています。

こちらで頂ける御朱印には「烏枢沙摩明王」の文字が入ります。御朱印集めをしている方はぜひ御朱印をもらってください。

住所:〒460-0011 愛知県名古屋市中区大須2丁目7−2
アクセス:名古屋市営地下鉄「大須観音駅」より徒歩6分

 

明徳寺


静岡県にある明徳寺では烏枢沙摩明王を御本尊として祀っています。下の病気を治すご利益があるとして全国的に信仰を集めています。

明徳寺でのお参り方法は他のお寺と違い、少し特殊です。明徳寺の境内には「おさすり おまたぎ」という場所があり、こちらで烏枢沙摩明王が祀られています。

「おさすり おまたぎ」には、男女それぞれのご神体があり、地面には和式便所のようなものがあります。

便所をまたぎ、ご神体をさすることが「おさすり おまたぎ」の参拝方法になります。このようにお参りをすることで、下半身の病気や怪我から守護してもらえるご利益に預かれます。

住所:〒410-3205 静岡県伊豆市市山234
アクセス:伊豆箱根鉄道「修善寺駅」よりバスで約25分

 

まとめ


トイレの神様として知られる烏枢沙摩明王について紹介させてもらいました。

烏枢沙摩明王は寺院のトイレだけでなく、どこの家庭のトイレにも宿り、私たちを不浄なものから守護してくれています。

烏枢沙摩明王への感謝の気持ちを抱きながらトイレ掃除をすると、開運や金運アップに繋がると言われています。ぜひこれからは烏枢沙摩明王への感謝の気持ちを持ってトイレの掃除をしてみてくださいね。

この記事をまとめた人

橋本ユリ
橋本ユリ
神社チャンネルのメインキャラクター。北極神社の新米巫女。2017年、神社参拝セミナーで羽賀ヒカルと出会い、日本人の良さと伝統を伝えていきたい!という思いから、この神社チャンネルサイトが始まりました。(という設定です。)

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