【大和武尊】ダイナミックでセンチメンタル!わかりやすいヤマトタケル伝説
こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。
橋本ユリ
ヤマトタケルノミコト、有名なゲームやスマホアプリにもよく登場する人物ですので、聞いたことのある名前かと思います。
「めちゃくちゃ勇敢な神様」という印象が強くありませんか?
「めちゃくちゃ勇敢な神様」という印象が強くありませんか?
実は彼、皇族の人間なのです。しかもかなり強くて美麗でした。
景行天皇の息子であり、息子も天皇になりましたが、彼は強くて美人で多くの伝説を残しながらも、天皇になることなく亡くなっていった悲運の王子なのです。
ここでは強烈で美しいヤマトタケルの伝説をまとめています。
それでは参りましょう!
ヤマトタケル(大和武尊)とは
ヤマトタケルはのちに付いた名で、本名を『ヲウス』と言います。
神武天皇が興した『大和朝廷』の12代目天皇、景行天皇の息子の一人です。
誰もが一度は耳にしたことのある『草薙の剣/くさなぎのつるぎ』を使ったのはこのヤマトタケルです。
さまざまな漢字表記
1番よく使われているのは日本武尊という表記でしょうか?現在一般的に使われているのもこれですが、日本書紀の表記もこれです。
倭建命、という書き方もあります。今はあまり使われませんが、これは古事記の中で使われている表記です。
家系図
垂仁天皇(イクメイリビコイサチ)
→の娘のヤマトヒメ(ヲヌスの叔母)(ヲヌスを援助 お守りとして服をあげる、草薙の剣をを授ける)
→の息子景行天皇(ヲヌスの父)(ヲヌスを恐れる 遠征を命じ遠ざける)
景行天皇(オホタラシヒコオシロワケ)の息子
→オホウス(兄)
→ヲヌス(ヤマトタケル)
ヤマトタケル(大和武尊)伝説
第一章 パパ、美人姉妹に出会えると思ったらとんでもサプライズに遭ったの巻
実は、ヤマトタケルは皇族の1人です。ヤマトタケルという名は後からついたものなので、序盤は『ヲウス/またの名をヤマトヲグナ』と呼んでいきましょう。
昔、神武天皇という人が、『大和政権(ヤマトの国に天皇がいるタイプの政治)』を確立させました。
政権は代々続きます。その中の12代目天皇である、景行天皇(オホタラシヒコオシロワケ)には多くの妻がおり、結果、子供が80人もおりました。
その中で、天皇を継ぐ資格をもっている太子とされている子はたったの3人しかおらず、ヲウスは長男ではなくむしろ幼いながら、その3人の中に入っていました。
さて、景行天皇はたくさんの妻子がいたのにも関わらず、『美濃にめちゃくちゃ美人
姉妹であるエヒメとオトヒメという娘たちがいるらしい』という噂に激しく興味を示しました。
自分の息子のうちの1人、『オホウス』に、『美濃に行って美人姉妹を連れ帰ってくるように』と命じました。
しかしこのオホウス能天気ボーイ、いざ美濃で美人姉妹に会うと完全に気に入ってしまいます。
なんと、父に内緒でこっそり美人姉妹と結婚してしまいました。
このままではマズいということで、別の娘を父の元に送り、それがエヒメとオトヒメだと誤魔化したのです。
そんな大胆なことをしておきながらやっぱりちょっと気にしているのか、その一件以降オホウスは父の前に姿を見せなくなりました。今まで朝と夕方には皆んなでご飯を食べていたのに、そこにも顔を出さなくなりました。
父はオホヌスが気まずがっていることに薄々なんとなく気付いているのかいないのか、その頃まだ14、5才だったヲウスに、「ねぎをしへよ(ちょっとお前からねぎらってあげなさい)」と言いました。ヲヌスがわかりましたと返事をしたので、父は安心しました。
しかし、ヲヌスがいい返事をしてから5日間も経ったのに、兄オホウスは姿を見せません。
父は不思議に思って、ヲヌスに、ちゃんとねぎらってくれたかと尋ねます。
父「ヲヌス、ちゃんとお兄ちゃんのことねぎらっといてくれた?」
ヲ「え、とっくにねぎらいましたよ」
父「あ、本当?どんな感じで?」
ヲ「ええ、まあ夜明けに兄がトイレに行くじゃないですか」
父「うん」
ヲ「それを待ちまして」
父「うん」
ヲ「ひっ捕らえて」
父「うん?」
ヲ「掴み潰して手足を引きちぎって、ムシロに包んで捨てておきました」
父「!?!?!!?!!?」
衝撃でした。
ねぎらってあげなさい、の意味を裏のワードだと思ってしまったヲヌスは、なんと兄をぶっ殺してしまっていたのです。
父は思いました。
まだ子供なのできちんとした言葉でお願いすべきだったとは思うがそれにしてもさあ…!しかもそんな涼しい顔で…怖い!ヲヌス!恐ろしい子!
我が子ヲヌスを恐れた父は、もう最早自分の手元にヲヌスを置いておきたくありませんでした。
しかし理由がないと追い払えませんから、口実として、九州への出張を命じます。
九州には、熊襲(朝廷に抵抗を示している九州南部の先住民)である『クマソタケル兄弟』というのがおります。
朝廷、つまり父やヲヌスの家系に反発する危険分子を討伐してきてくれとお願いしたのです。
父の思惑も露知らず、ヲヌスは、自分の有り余る力を活かせる!と喜びます。
叔母のヤマトヒメに貴族の男女の服を持たせてもらうと、武器の短剣を懐に入れて西に旅立っていきました。
第二章 ヲヌスはめちゃくちゃ美麗。女顔負けの女装を披露の巻
意気揚々と旅立ち、長旅を終えてようやくクマソタケルの館にたどり着きました。
しかしそこはガチガチにガードされていて、その上、なにやら宴が開かれるようで、中では人々が大忙しで働いていました。
それを見たヲヌスは、とある作戦を思いつきます。決戦は宴の日。
さて、いよいよ宴の日がやってまいります。
ヲウスは、叔母にもらった服を着て、括っていた髪を解いて垂らします。
どこからどうみても美しい娘の姿になりました。
そして、宴に行く女性客の中に紛れ込んで、無事に館に潜入したのです。すごいな!
グンバツに美人なヲヌスは、宴中にクマソタケル兄弟にガッツリ見初められます。
「ちょっとこっちにきてお酌してよ!」と、クマソ兄とタケル弟の間に呼ばれます。
2人の間に座ってお酒を注ぐ麗しき娘ヲヌスにクマソタケル兄弟もご機嫌なご様子。
やがて、そろそろ宴が終わると言う時、ヲヌスは突然クマソお兄ちゃんの襟首を引っ掴んで、懐から取り出した短剣を胸にブスリ!と突き刺します。
びっくりしたタケル弟、大慌てで逃げ出します。追うヲヌス。追ヌス。
タケルを館の端に追いやることに成功したヲヌスは、タケルの背中の皮をひっ掴んで…タケルの尻をひと突きにして串刺しにしました!いや過激か!
タケルは息も絶え絶えに、ヲヌスの名を尋ねます。
そら見目麗しい娘が急にものすごい男らしく殺しにきたら名を尋ねますね。
タケルが「私はヲヌス、またの名をヤマトヲグナ」と名乗ると、タケルはヲヌスのワイルドさを褒めて、自分の名をヲヌスに与えました。
つまり、「ヤマトタケルと名乗れ」と。
その言葉を聞き終えたヲヌス、改めヤマトタケルは、剣を引き抜きます。
そしてタケルの体を切り刻んでバラバラにしたのでした。
ちなみに、兄の手足を引きちぎり、タケルの死体をバラバラにしたのは、残虐な行為をしているわけではなく、死者の復活を恐れ、それを阻止する為の行動のようです。
とにかく、こうしてヲヌスはヤマトタケルと名乗るようになりました。
第三章 マジか!驚愕!計画通り!ついでに寄った出雲国もゲットだぜ!
クマソタケル兄弟を無事討伐したヤマトタケルは、家に帰るついでに出雲国に夜ことにしました。
そこは猛々しい男として有名だったイズモノタケルという頭が治めている土地でした。
ヤマトタケルは、イズモノタケルと仲良くなります。
ある日、ヤマトタケルはイズモノタケルを誘って水浴びに出かけます。
水からあがると、ヤマトタケルは「ちょっとせっかくだしお互いの太刀交換しようぜ!」と言って自分のものではなくイズモノタケル太刀を腰につけました。
あとから上がってきたイズモノタケルは、残っていたヤマトタケルの太刀を腰に佩きました。
ヤマト「せっかくだから勝負しない?お互いの剣で!」
イズモ「おー!いいよ!」
ヤマト「ではいざ!(スラっとイズモノタケルの太刀を抜く)」
イズモ「では私も…あれっ、えっ、なんで抜けないえっ…。…!?」
なんと、ヤマトタケルは、予め自分の刀を偽物の木刀と交換しておいたのです。
水浴びに誘ったのも、太刀を交換したのも、勝負を挑んだのも、全ては計画通り…!
イズモノタケルが一生懸命剣を抜こうとしている間に、ヤマトタケルはイズモノタケルに斬りかかり、叩き斬ってしまいました。
こうして、ヤマトタケルは出雲国も手に入れたのでした。
第四章 草薙の剣ーー!ヤマトタケル、火を放たれるの巻
父の指示であったクマソタケル討伐と、言われていないが出雲国を討ったヤマトタケルは、いそいそと父のいる大和へと帰りました。
ヤマトタケルを恐れている父は、ヤマトタケルに対し、優しい言葉ではなく、次はすぐに東を征して来なさいという命令を下しました。
なんでやお父さん…僕のこと嫌いなんか…そんなに僕に死んでほしいんか…
ヤマトタケルの心は傷ついてしまいます。
ヤマトタケルは、クマソタケルを倒しに行く時に服を持たせてくれた叔母、ヤマトヒメに会います。
「天皇(父)は私に死ねとお思いなのだと思う」と叔母に話す悲しそうなヤマトタケル…。
叔母はそんなヤマトタケルに、『草那芸の剣(草薙の剣/くさなぎのつるぎ)』と、もう一つ『困った時に開ける袋』をくれました。
叔母から授かったものを持ち、ヤマトタケルは東へと旅立ちます。
東征の道すがら、ヤマトタケルは、相武国(さがむのくに)で国造(くにのみやつこ/その土地を治めている偉い人)から、「悪い神がいるから退治してくれ」とお願いされます。
そういうことならと引き受けたヤマトタケルは、そこえらい目に遭ってしまいます。
なんと、その国造に騙し討ちされてしまったのです。
実は悪い神をやっつけてほしいというお願いは嘘。ヤマトタケルを嵌める為の戦略でした。
ヤマトタケルが相武国の野に入った瞬間、国造はそこに火を放ちます。
火に囲まれて絶体絶命のヤマトタケル!
そこで、「困った時に開けなさい」と叔母のヤマトヒメに貰った袋を思い出します。
急いで開けてみると、そこには火打ち石が入っていました。ドンピシャで入っていました。
叔母にもらった草薙の剣で自分の周りの火を払うヤマトタケル。
そして、火打石で向かい火を放ちます!
ゴゴゴゴゴゴ…
こうしてヤマトタケルは、国造の騙し討ちに見事に打ち勝ったのでした。
第五章 唐突に物語に現れた健気すぎる妻…切なすぎるの巻
さらに東へ進んでいくヤマトタケル。走水(浦賀水道のこと)を渡ろうとしたのですが…どうやら、海をナメたようで、海神の怒りを買い、大嵐に遭います。
荒れ狂う大波に大絶望のヤマトタケルたち。絶体絶命のピンチ!
そこで立ち上がったのが、同行していたヤマトタケルの妻であるオトタチバナノヒメでした。
「海の神の怒りを鎮めるには、これしかありませぬ」
なんとオトタチバナノヒメは、その身を海に投げて、自分自身を生贄にしました。
海に身を投げた七日後、浜辺で彼女に櫛のみが見つかったと言われています。
オトタチバナノヒメの犠牲で無事に海は鎮まりました。
ヤマトタケルたちは、無事に航海を終えて東に進むことができたのです。
頑張って東征した帰り道、身投げして助けてくれた愛しの妻を想うヤマトタケル。
足柄の頂上に着いた時、「吾妻はや」と嘆いたそうです。
第六章 自然ナメるなとあれほどいっただろう…!ヤマトタケルは一体どうなってしまうのー!?次回!ヤマトタケル死す!
大和への帰り道、尾張で、見初めた女性であるミヤズヒメを無事奥さんにもらいます。仲睦まじく過ごしていたヤマトタケルでしたが…。
ある日、「今日はそんなに大した討伐でじゃないから」と、嫁に草薙の剣を預けて出かけました。その討伐の内容とは、伊服岐の山の神を鎮める事でした。
ヤマトタケルは、山に入ってずんずん進んでいきます。
その途中に、白い猪が現れました。ヤマトタケルは、その白い猪を見てこう考えます。
(ハハーン、こいつは山の神の遣いだな?まあ取り敢えず生かしておいてやるか。山の神を鎮めてから殺しゃあいいでしょう、まあ遣いだしな。)
ですが実は、この白い猪こそが山の神だったのです。
それを、遣いかなんかだろうから後回しにするか、という扱いをされては堪ったもんじゃありません。当然憤怒します。激おこです。
「おのれ人間…ナメやがって…山の偉大さを思い知るがいい」
山神は、ヤマトタケルに天災を振りかけます。
大粒の雹に打ち据えられ、ヤマトタケルは山の神の平定に失敗したまま山を下っていきました。
ちなみに一説では、弱ったヤマトタケルの膝に三個のコブが重なってしまったそうで、その土地のことを三重、というそうです。
衰弱してしまったヤマトタケル。
最期には、故郷の大和を想う歌を詠んで、亡くなっていきました。
父に恐れられ追い出されて尚故郷を想う最期…切な…。
ヤマトタケルが亡くなったと聞き、奥さんや子供が駆けつけて葬儀を行ないました。
すると、ヤマトタケルの遺体から魂が抜け出てきて、白鳥に姿を変えました。
そして優雅に飛び立ったのです…すごい…。
白鳥は、ヤマトタケルが懐かしんだ大和の国を通り、河内国の志磯に舞い降りました。
此処がいいのね…。そう理解して、そこに御陵を建てました。その土地は、白鳥陵と名付けられました。
そしてその地にヤマトタケルの魂を鎮まらせようとしたのですが、白鳥は再び大きく舞い上がり、大空に羽ばたいていったのです…!
ーfinー
ヤマトタケル(大和武尊)にまつわる神社
ヤマトタケルゆかりの神社は数多くありますが、代表的なのはこちらです。
鳥越神社(東京)
ヤマトタケルを祀って白鳥神社という名がついており、白鳥大明神と呼んでいたが、源頼家たちが朝廷に向かう際に川を渡れなくて困っていたところ
白い鳥が渡る場所を示してくれて無事に渡れたので、源頼家が鳥越大明神という社号を奉ったので、それ以降鳥越神社と呼ばれるようになった
浅賀多神社(千葉県)
ヤマトタケルが東征の途中で、境内にある神社に鏡を掛けて伊勢神宮の代わりにして祈願したと言われている
熱田神宮(愛知)
草薙の剣が保管されている
大鳥大社(大阪府)
ヤマトタケルが白鳥になって飛んで来た地
建部大社(滋賀県)
ヤマトタケルを御祭神としており、源頼朝が島流しにあった際に源氏の再興を願い、見事叶えられたとされている
伊勢神宮(三重県)
叔母のヤマトヒメがおり、天照大御神を祀った人物で初代斎宮と言われている
ご利益
ヤマトタケルは神様ではなく実在の人物ですが、ヤマトタケルを祀っている神社は多くあります。
ご利益は神社によって違うのですが、
- 国土平安
- 五穀豊穣
- 農業神
- 勝負の神様
- 商売繁盛
などがあります。
まとめ
橋本ユリ
ヤマトタケル伝説、いかがでしたでしょうか?
大和武尊は、幼い頃の言葉の行き違いから天皇である父の愛に恵まれず、各地で戦い伝説を残すも、最期には故郷に帰れぬまま亡くなってしまった人物でした。
生きていれば間違いなく天皇になっていたであろう人物です。
興味のある方は是非、ゆかりの地へ訪れてみたり、書籍や映画を見てみて下さい。
この記事をまとめた人
- 神社チャンネルのメインキャラクター。北極神社の新米巫女。2017年、神社参拝セミナーで羽賀ヒカルと出会い、日本人の良さと伝統を伝えていきたい!という思いから、この神社チャンネルサイトが始まりました。(という設定です。)
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