大嘗祭とは?新嘗祭との違いや歴史について
こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。
橋本ユリ
令和元年11月、皇位継承に伴う皇室行事である「大嘗祭(だいじょうさい)」が行われたことが話題になり、多くのメディアで取り上げられました。
前回の大嘗祭は平成2年だったので、大嘗祭が行われたのは実に29年ぶりのことになります。今回のニュースで大嘗祭の存在を始めて知った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、これほどまでに話題になった大嘗祭とは一体どのような行事なのでしょうか?
ということで今回の記事では、皇室において非常に重要な行事である大嘗祭について詳しくまとめていきます。
それでは参りましょう!
大嘗祭とは
大嘗祭とは、簡単に言うと新天皇が五穀豊穣を祈るために行われる儀式です。
新天皇が神前に新穀を供え、そして新穀で作った食事を天皇陛下が自ら召し上がられます。このように天皇陛下が神と共に食事をすることで、次の年の収穫をお祈りするのが大嘗祭なのです。
大嘗祭と同じように天皇様が五穀豊穣を祈る儀式は、毎年11月23日に行われています。それは大嘗祭ではなく「新嘗祭(にいなめさい)」と呼ばれています。新嘗祭の日は全国各地の神社でも五穀豊穣を祈る祭祀が執り行われています。
では、新嘗祭と大嘗祭がどう違うのかと言うと、大嘗祭は「新天皇が即位した後に初めて行われる新嘗祭」なのです。時代の節目にのみ行われる大嘗祭は非常に重要な儀式とされており、多額の予算を投入して盛大に行われます。
大嘗祭の日には、全国各地の神社でも「大嘗祭当日祭」として盛大に秋の収穫を祝う祭祀が行われます。令和の大嘗祭当日祭は伊勢神宮や香取神宮などで行われ、県知事や各団体の代表者が参列し、皇室の繁栄と五穀豊穣を祈りました。
また、大嘗祭や新嘗祭の日には「特別御朱印」と呼ばれる限定の御朱印を頂くことができます。特別御朱印の文字や押印は神社によって違います。
特に大嘗祭の特別御朱印を頂くことができるのは、新天皇が即位されるときだけなので非常に貴重です。
令和元年の特別御朱印は、東京を中心に全国の様々な神社で頒布されました。一部の神社では、あまりに人気過ぎて長蛇の列ができたほどです。
このように、大嘗祭は新天皇が即位する際に一度だけ行われる非常に特別な祭祀なのです。
日程
令和元年の大嘗祭は、11月14日の午後18時30分に始まり、翌15日の深夜3時に終了しました。
儀式の様子は一般公開されていませんが、大嘗祭終了後の11月21日から12月8日にかけて大嘗宮(だいじょうきゅう)の一般参観が実施されます。
大嘗祭に関わる日程は下記の通りです。
- 大嘗祭:11月14日18時30分~15日午前3時
→新天皇様が神前に新穀を供え、食事を共にする儀式です。 - 大饗(だいきょう)の儀:11月16日、18日
→大嘗祭の参列者をもてなす祝宴です。 - 大嘗宮一般参観:11月21日~12月8日
→大嘗祭が行われた大嘗宮が一般公開されます。参観料は無料で事前の予約なども必要ありません。 - 親謁(しんえつ)の儀:11月22日、23日
→天皇皇后両陛下が伊勢神宮を参拝し、大嘗祭が終わったことを神前で報告される儀式です。
下記は大嘗祭の準備のための儀式日程です。
- 抜麻式(ばつましき):7月15日
→神前に供える「麁服(あらたえ)」の材料となる大麻を収穫する儀式です。 - 大嘗祭地鎮祭(じちんさい):7月26日
→大嘗宮の建設地で工事が無事に終了することを祈る儀式です。 - 斎田抜穂(さいでんぬきほ)の儀:9月27日
→大嘗祭で神前供える稲を収穫する儀式です。
麁服の材料となる大麻は徳島で、稲は京都と栃木でそれぞれ収穫されました。他に、神前に供えるため「庭積(にわづみ)の机代物(つくえしろもの)」として全国各地から魚・野菜・果物・海鮮などの特産品が奉納されています。
大嘗祭において神前に供えられる神饌(しんせん)のうち、稲は特に重要視されています。そのため大嘗祭は、稲を収穫する米農家を選定するところから始まります。
なお、令和の即位の礼は10月22日に執り行われ、10月31日に全て終了しました。即位の礼では、全世界183ヶ国から王族や首脳などが来日されました。
どのくらいの費用をかけて行う?
令和の大嘗祭の費用について、当初は27億円超の見通しとされていましたが、結果的には約24億円ほどとなるそうです。平成の大嘗祭費用は約22億円でしたので、約2億円ほど増額したことになります。
たった一晩の秘儀のためにこれほどの国費を投入することに反対する国民も多数おり、東京駅で反対集会が行われたことがニュースになっています。
また、秋篠宮殿下は、大嘗祭という宗教色の強い行事を国費で賄うことに疑問を呈されており、「内廷会計から費用を出すべきではないか」という意見を述べられています。
平成の大嘗祭の際には「宗教儀式に国費を出すのは政教分離の原則に反するのではないか」として各地で訴訟が巻き起こりました。そして、令和の今回も同様に市民団体からの訴訟がありましたが、東京地裁はこれを却下する判決を言い渡し、裁判は終了しています。
平成に続いて令和の大嘗祭の費用に関する問題も、各地で様々な波紋を呼びました。
行われる場所
大嘗祭は、大嘗宮という場所で執り行われました。大嘗宮は、大嘗祭を執り行うために皇居の東御苑に建設されたものです。
大嘗宮の仮設工事は一般競争入札で「清水建設」が9億5700万円で落札しました。予定価格は15億4220万円だったので、約6割ほどの価格に落ち着いたことになります。
なお、大嘗宮は祭祀が全て終わった後に一般公開され、その後に破棄されます。
歴史
大嘗祭は、7世紀天武天皇の時代に初めて新嘗祭と区別され、新天皇の即位に伴う儀式と定められたといいます。
その後、律令制の整備に伴い祭祀の内容などが正確に定められていきました。そして新天皇即位の際には大嘗祭を執り行うことが通例となったのです。
しかし、大嘗祭が行われていなかった時代もありました。室町時代の1467年に応仁の乱が始まると資金が立ち行かなくなり、大嘗祭は一時中断となってしまいます。その後も内乱は続き、約220年間にわたって大嘗祭は行われませんでした。
江戸時代の1687年、東山天皇が即位の際に大嘗祭は復興します。次の中御門天皇(なかみかどてんのう)のときには大嘗祭は行われませんでしたが、その次の桜町天皇以降、現代まで大嘗祭は途切れることなく続いています。
なお近代の大嘗祭が行われた年は下記の通りです。
- 明治天皇:1871年
- 大正天皇:1915年
- 昭和天皇:1928年
- 上皇:1990年
- 今上天皇:2019年
上皇とは生前退位をした天皇様に与えらえる称号です。なぜ「平成天皇」ではないのかというと、「〇〇(元号)天皇」という呼び方は、天皇様が崩御(ほうぎょ)された後に使われる呼び名であるためです。
同じ理由から、今上天皇のことを「令和天皇」という風に呼ぶこともありません。
長い歴史の中で一時中断されたことはあったものの、大嘗祭は7世紀から現代まで約1,300年以上にわたって行われてきた非常に伝統のある祭祀なのです。
大嘗祭の日は祝日?
新嘗祭は11月23日に行われるのが慣例ですが、大嘗祭は11月の2回目の卯の日に行われるのが慣例となっています。
卯とは十二支のウサギのことです。毎年干支が変わるのは日本国民なら誰もが知っていることですが、実は干支は365日の全ての日に割り当てられているのです。
日にちに割り当てられる干支も「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」というように十二体が順番に回っています。
2019年11月の干支カレンダーを見てみると、卯の日は11月2日・14日・26日でした。2回目の卯の日は14日なので、令和では11月14日~15日にかけて大嘗祭が行われたということですね。
大嘗祭の日は祝日になるのかと話題になりましたが、結論から言うと大嘗祭の日は祝日にはなりません。11月14日~15日は木曜日と金曜日だったので普通の平日です。
ただし即位礼正殿の儀が行われた10月22日は祝日となっていました。
更に、今上天皇の誕生日にあたる2月23日は、天皇誕生日として2020年から祝日になることが決まっています。しかし2020年の2月23日は日曜日であるため、24日の月曜日が振替休日で休みになりますので注意してくださいね。
2019年の奉納米について
奉納米は、大嘗祭において神に奉納するお米のことです。
栄えある2019年大嘗祭の奉納米に選ばれたのは、栃木県の「とちぎの星」と京都府の「キヌヒカリ」でした。
栃木県と京都府、それぞれの米の産地では、大嘗祭で神前に供えるための米を収穫する「斎田抜穂の儀」が9月に執り行われました。メディアでも取り上げられていたので、知っている人も多いのではないかと思います。
こちらの儀式は、まず田んぼの中に天幕を張り、宮内庁の関係者や地元の代表が参列します。そして宮中祭祀の担当者が祝詞(のりと)を読み上げ、稲を鎌で刈り取り神前に捧げるのです。
斎田抜穂の儀の後、「とちぎの星」を販売している地元では大嘗祭が始まる前から盛り上がりを見せ、米の限定セールには長蛇の列ができていました。
なお平成の大嘗祭の奉納米に選ばれたのは、今でこそ有名な「あきたこまち」です。大嘗祭で奉納米に選ばれたのをきっかけに、知名度が全国区に広がりました。
大嘗祭がいかに国民の関心を集めているかが分かりますね。
奉納米の日本酒
宇都宮酒造は「とちぎの星」を使って「四季桜 とちぎの星 純米酒」という清酒を作りました。やや辛口で芳醇な香りが楽しめるお酒だそうです。
予約が始まった途端に注文が殺到し、10月の中頃には1万本が完売するという人気ぶりです。現在では正月の新酒に間に合うように製造を行っているとのことです。
なお「キヌヒカリ」を使用した日本酒は前々から販売されており、大嘗祭に合わせて新しく製造するといったことは無かったようです。
毎年の奉納米
新嘗祭において皇室に献上する奉納米は、毎年自治体の審査を経て選ばれます。自治体に選ばれた農家は、田んぼの一部を献穀斎田(けんこくさいでん)として米の栽培を始めます。
そして収穫時期になれば斎田抜穂の儀を行い、神前に捧げる米を収穫します。
大嘗祭の奉納米に選ばれることはもちろん特別なことであり栄誉なことなのですが、新嘗祭の奉納米に選ばれることもまた同じように米農家にとっては栄誉なことなのです。
大嘗祭と新嘗祭、神嘗祭の違い
新嘗祭は毎年11月23日に行われる宮中行事です。天皇が新穀を神に捧げ、自らも食事を召し上がることで五穀豊穣や国家安泰を祈ります。
大嘗祭は新天皇が即位した後に、初めて行われる新嘗祭のことです。儀式の内容は新嘗祭とほぼ同じなのですが、大嘗祭を行うために皇居東御苑に大嘗宮という祭場が建設されるなど、国費を投入して盛大に執り行われます。
そして神嘗祭(かんなめさい)というのは、毎年10月に伊勢神宮で行われる宮中行事です。伊勢神宮では年間1,500回の恒例祭祀が行われていますが、その中でも神嘗祭は最も重要な祭祀とされています。
神嘗祭は、その年に収穫された新穀を天皇陛下が天照大御神に捧げることで収穫の恵みに感謝をするといった意味のある祭祀です。
新嘗祭と神嘗祭の関係について、地上で収穫した穀物は本来は神のものであるという考え方から、まずは神嘗祭で神に新穀を捧げます。その1ヶ月後に、新嘗祭において天皇陛下が神の残りものである新穀を召し上がります。
神嘗祭が新嘗祭より1ヶ月先んじて行われるのには、新穀を一番最初に神に捧げるという意味があるのです。
大嘗祭・新嘗祭・神嘗祭の違いをまとめるとこのようになります。
- 新嘗祭
毎年11月23日に行われる。天皇が神前に新穀を捧げ、自らも食事を召し上がることで五穀豊穣を祈る儀式。 - 大嘗祭
新天皇が即位された後に初めて行われる新嘗祭のこと。このために大嘗宮が建設されるなど、多大な国費を投入して行われる。 - 神嘗祭
毎年10月に伊勢神宮で行われる宮中行事。天皇陛下が天照大御神に新穀を捧げ、収穫の恵みに感謝をする。
新嘗祭と大嘗祭、そして神嘗祭はそれぞれ違った意味があるものですが、このように深い関連性があるのです。
まとめ
大嘗祭について詳しく紹介をさせてもらいました。
明治天皇の大嘗祭が行われた1871年から2019年までの148年間で大嘗祭が行われたのは5回だけです。新天皇が即位する時代の節目を平穏無事に迎えられたというのは、とても有難いことですね。
大嘗祭は天皇様が神前に新穀を供えるという一世一代の儀式ではありますが、それと同時に全国の神社で五穀豊穣を祝うお祭りでもあります。
橋本ユリ
今年の収穫に感謝し、また来年もたくさんの収穫があるよう祈るため、ぜひ近くの神社へお参りに行ってみてくださいね。
この記事をまとめた人
- 神社チャンネルのメインキャラクター。北極神社の新米巫女。2017年、神社参拝セミナーで羽賀ヒカルと出会い、日本人の良さと伝統を伝えていきたい!という思いから、この神社チャンネルサイトが始まりました。(という設定です。)
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