9割の人が誤解している、最澄と空海の2人の関係について
こんにちは、北極神社の新米巫女、橋本ユリです。
突然ですが、空海さんと最澄さんについて、こんな話を聞いたことはありませんか?
「2人は実は同性愛者で、共通のお弟子さんをめぐって取り合いをしたらしい」
……じつは、これ、とんでもない誤解なんです。
わたしも最初にこの話を聞いたとき、「え、そうなの?」と驚きました。
でも、羽賀ヒカルさんからこの2人の本当の関係について教えていただいて、まったく印象が変わったんです。
結論から言えば、空海さんと最澄さんは「魂の交流」と呼ぶべき深い絆で結ばれていました。そして2人が別れたからこそ、日本仏教の土台ができあがったのです。
ゴシップ的な情報にとらわれてしまうと、この2人が本当に伝えたかったこと、その心というものを見誤ってしまいます。
今回は、9割のひとが誤解している空海さんと最澄さんの関係について、詳しくお伝えしていきますね。
目次一覧
2人が出会った時代背景を知ると、見え方が変わる
空海さんと最澄さんのことを理解するには、まず時代背景を知る必要があります。
2人が生きたのは、奈良時代の末期から平安時代の初期。
この頃の仏教は、朝廷や寺院、民衆に対して非常に大きな力を持っていました。
ただ、力を持つとどうなるか……人間ですから、調子に乗ってしまうこともありますよね。
政治権力と結びつくことで、本来は真理を探求するはずの仏教が、どこか違う方向に進んでいたんです。
羽賀ヒカル
当時、空海さんと最澄さんが仏門を志したタイミングというのは、「何かこれ違うよね」という思いがあったと思います。
この「何か違うよな」という思いを抱えながら、最澄さんは比叡山で修行して悟りを開き、エリートコースに乗ります。
一方の空海さんは、当時の都の中心から離れた場所で修行を続けていました。
まったく別々の道を歩んでいた2人。
そんな2人が交わるきっかけとなったのが、唐への留学だったんです。
唐への留学で運命が交錯する
空海さん31歳、最澄さん38歳のとき、2人は唐に留学することになります。
ここで面白いのが、2人の立場の違いです。
最澄さんは、いわば国家公務員や大学教授のようなエリート。
「この人物を唐に留学させれば、日本にとって役立つだろう」と国から認められての留学でした。
でも空海さんの方は……謎なんですよね。
なぜなら、当時は無名の一人のお坊さんだったからです。
羽賀ヒカル
当時の唐に留学するっていうのは、いまで例えると宇宙旅行に行くようなものです。危険も伴いますし、むちゃくちゃお金もかかる。しかも無事に行って帰ってこれるかどうかわからない。
船も何隻か同時に出発していて、空海さんは第1船、最澄さんは第2船に乗ったと言われています。
航海技術がいまほど安定していませんから、2人は中国でまったく別々のところにたどり着くことになりました。
これが、この2人の明暗を分けることになるんです。
このとき、2人の間に交流があったかどうかは定かではありません。
でも、羽賀さんはこう予測しています。
羽賀ヒカル
「なんかあいつ、ちょっとオーラ違うよね」とか「なんだあいつは」みたいな感じで、お互いに一目置いていたんじゃないかと思います。
なんだかワクワクしませんか?
のちに日本仏教の二大巨頭となる2人が、この時点ですでにお互いを意識していたかもしれないなんて。
帰国後、最澄さんが空海さんを見出した
唐から帰国した2人。
最澄さんは天台宗、空海さんは真言宗という、それぞれ異なる思想体系を学んで帰ってきました。
いずれもたった2年ほどで帰国しているんですよね。
これは非常に短い期間だと言えます。
帰国後、最澄さんはエリートとして朝廷に認められたお坊さんでした。
特に当時の桓武天皇に気に入られていて、天皇が病気で苦しんでいるときに祈祷をする立場だったんです。
一方の空海さんは、帰国してから不遇な時期を何年か過ごしていたと言われています。
そんな空海さんが時代の中心に現れるきっかけを作ったのが、じつは最澄さんだったんです。
羽賀ヒカル
なぜ最澄さんが空海さんを勧めたかというと、空海さんがどんどん民間で有名になっていく。同じ時期に唐に留学しているけども、自分とは違う知恵を学んでいる。自分が持って帰ってこれなかったお経を持って帰ってきている。「こいつなんか違うな」といった、惹かれ合う魂というものがあったと思います。
これ、すごいことだと思いませんか?
すでにエリートとして地位を確立していた最澄さんが、無名だった空海さんの才能を見抜いて、自ら推薦したんです。
普通なら、ライバルになりそうな人物は遠ざけたくなるものですよね。
でも最澄さんは違った。
「当時の日本の仏教ってなんか違うよね」という共通の思いが、2人を結びつけたのだと思います。
年下の空海さんに弟子入りした最澄さん
ここからが、さらに驚きの展開です。
空海さんが唐から持ち帰ってきたお経は、最澄さんにとって非常に魅力的でした。
お経の貸し借りなどが始まり、交流が深まっていきます。
最澄さんという方は、どこまでもストイックで真理を求める方です。
「自分は知らないことを、この空海さんが知っているな」と感じた最澄さんは、なんと自分より7つも年下の空海さんのところに弟子入りするわけなんです。
7歳年上の先輩が、年下に頭を下げて教えを請う。
最澄さんの真理への情熱が、どれほど強かったかが伝わってきますよね。
そして、有名なやりとりが残っています。
羽賀ヒカル
最澄さんは空海さんにお願いします。「あなたの知っている真理を私も知りたいです。どのくらい時間がかかりますでしょうか」と。空海さんは答えます。「私は2ヶ月でこの教えを収めました。優秀な僧侶であれば半年で終わると思います」と。
なんとも天才・空海らしい言葉ですよね。
最澄さんが「ならば私はどのくらいかかりますでしょうか」と問うと、空海さんは「残念ですが、3年はかかります」と答えたと言われています。
これ、バカにしているわけではないんです。
羽賀ヒカル
これはどういう意味かというと、「最澄さん、あなたは私とは違う悟りを得ている。あなたは私とは違う山を登りきってしまっている。その山を一回降りて、私のもとに上がってくるためには、普通の人であれば上がってくるだけでいいけども、一回降りてこなきゃいけない。だから3年はかかります」という解釈です。
お互いの悟りを認め合いながらも、方法論が違う。
これが、のちの2人の関係を理解する重要なポイントになってきます。
「ラブレター」という誤解はなぜ生まれたのか
さて、ここで冒頭のゴシップ的な話に戻りましょう。
最澄さんは3年もかけて学ぶことはできなかったので、自分のお弟子さんである泰範(たいはん)さんを空海さんのもとに派遣することになります。
この泰範さんとのやりとりをめぐって、あの「同性愛者だった」という誤解が生まれたんです。
最澄さんから泰範さんに宛てた手紙が残っています。
「久隔帖(きゅうかくじょう)」というものです。
この手紙がインターネットなどで「最澄から弟子に送ったラブレターだ」と解釈されているんですね。
なぜラブレターと解釈されるようになったのか。
それは、手紙の中に「恋」という文字が出てくるからなんです。
羽賀ヒカル
手紙には「恋はせること極みなし」とあるわけなんですね。ここで「恋」という文字が出てくるところから、「これはラブレターなんじゃないか」と解釈されているわけです。
でも、ちょっと待ってください。
「恋」って、人間が人間に対してだけ使う言葉ではないんですよね。
羽賀ヒカル
人間が自然に対して、もしくは真理に対して恋焦がれるという言葉を使ったりします。「あなたのことを思います」といったような感情のこもった言葉が「恋」なんです。単なる恋愛だけで使われる漢字ではないわけです。
しかも、その「思い」の部分については最初の2行しか書いていないんですよ。
手紙の大半は、お経の内容に関する問いかけなんです。
これをラブレターと解釈するのは、かなり無理があると思いませんか?
羽賀さんも、この解釈には違和感を感じているとおっしゃっています。
羽賀ヒカル
最澄さんはむちゃくちゃストイックな方です。煩悩や欲望に関しては、かなり否定的なんですね。お坊さんとして修行するというのは、そういった欲望を全部燃やし尽くして、悟りを開くために一心に行くのが僧侶としての道なんだ、ということが他の文章では見て取れる。なぜここだけ俗っぽい感じになってしまうのかというところが、私には最初から疑問でした。
たしかに、最澄さんは他の文章を見る限り、非常に情に熱い方で、お弟子さんへの面倒見もむちゃくちゃいい方だったそうです。
だから、自分の弟子が無事で過ごしていると聞いて「安心しました」と書くのは理解できます。
でも、それを単なる色恋と解釈するのは、曲解だと言えるでしょう。
2人が別れた本当の理由
では、空海さんと最澄さんはなぜ最終的に別れてしまったのでしょうか。
きっかけは、お経の貸し借りをめぐるやりとりでした。
最澄さんは空海さんに「理趣経(りしゅきょう)」というお経を貸してほしいと頼みます。
それに対して、空海さんは「貸せない」と答えたんです。
この理趣経というお経は、簡単に言うと「性的なエネルギーを悟りに変える」ということについて述べられているものです。
羽賀ヒカル
宗教的な奥義や秘儀というのは、ここは避けては通れない道なんですよね。人間の生命エネルギーの根本ですから。それを悟りに変えるということについて、理趣経には書いてあるんです。
でも、なぜ空海さんは貸さなかったのでしょうか。
それは、2人の方法論の違いにあります。
最澄さんが重要視したのは「学びと修行」。
善なる行いを積むことによって悟ろうという思想です。
一方、空海さんは「人によって目覚める」という思想。
人間にはもともと仏性が備わっていて、その仏性を目覚めさせるために三密(身・口・意)を揃えることで目覚めるんだ、という考え方です。
羽賀ヒカル
たとえて言うなら、最澄さんの場合は「悟るためには学んで、善なる行いを積み重ねていって悟るんだ」という考え方。空海さんは「もともと人間には仏性が備わっている。その仏性を目覚めさせるためには三密を揃えることによって目覚めるんだ」という、根本的な思想が違うわけなんですね。
この方法論の違いから対立が起き、2人は最終的に分かれていったということなんです。
別れたからこそ、日本仏教の土台ができた
ここで、とても大切なことをお伝えしますね。
2人が別れたからこそ、良かったんです。
「え? 仲良くしていた方が良かったんじゃないの?」と思うかもしれません。
でも、羽賀さんはこう語っています。
羽賀ヒカル
このまったく異質な日本仏教というものが、当時の比叡山と高野山に作られたことによって、後々の日本仏教、いや日本人の思想にかなり大きな影響を与えるということなんです。そういった意味では、2人が仲良しでは、後々の仏教の世界から考えて良くなかったのかもしれない。
日本というのは、言霊でいうと「日本(ひもと)」です。
出雲と大和、西日本と東日本、東京と京都……というふうに、中心が2つあるんですよね。
日本仏教という意味では、この空海さんと最澄さんがその2つの中心になります。
羽賀ヒカル
空海さんは高野山に何を作ろうとしたか。これは宇宙です。最澄さんも比叡山に何を作ろうとしたか。これも宇宙だと思います。いわば比叡山と高野山というのは、2つの宇宙の中心と解釈することもできると思います。
2人の思想がベースになって、後々の日本仏教ができていったんです。
もし2人がずっと仲良しのままだったら、この多様性は生まれなかったかもしれません。
魂の交流、阿吽の呼吸
ここまで読んでいただいて、空海さんと最澄さんの関係について、印象が変わったのではないでしょうか。
2人はほぼ同時代に生まれ、当時の日本仏教に対する反発心から新しい仏教を作り上げました。
その2人の魂というのは、共鳴するようであった。
羽賀ヒカル
それはまさに「阿吽の呼吸」があったということです。これは仏教の言葉で、「阿吽」とは宇宙の始まりを意味する言葉です。当時の仏教に対する反発、もしくは日本の100年後、200年後、いや1000年後まで見据えながら、2人はどういった思想が日本にとって必要なのかということを考え、まったく性格も違う、生まれも違うこの2人が、この時代において仏教を作り出した。このことに大きな意味があると思います。
わたし、この話を聞いて胸が熱くなりました。
人間の出会いというのは、壮大なものがあるんですね。
そのときは分からなくても、それが100年後、200年後、300年後、1000年後……空海さんと最澄さんの場合は1200年後のわたしたちにまで影響を与えている。
そしてこの後も、ずっと影響を与え続けていくんです。
そんな魂の交流、素敵だと思いませんか?
1200年後のわたしたちへ
いかがでしたか?
空海さんと最澄さんの関係は、ゴシップで語られるような単純なものではありませんでした。
- 2人は「当時の仏教、何か違うよね」という共通の思いで結ばれていた
- 最澄さんは空海さんの才能を見出し、時代の中心に引き上げた
- 7歳年上の最澄さんが、年下の空海さんに弟子入りするほど、真理への情熱があった
- 「ラブレター」という解釈は、「恋」という言葉の曲解から生まれた誤解
- 2人は方法論の違いから別れたが、それが日本仏教の多様性を生んだ
2人の魂と魂がぶつかり合いながら、いまのわたしたちに影響を与えている。
その影響は、わたしたちにも受け継がれています。
ゴシップ的な情報に惑わされず、この2人が本当に伝えたかったことに目を向けてみてください。
きっと、日本の歴史や仏教への見方が、もっと深くなると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
よろしければ、神社チャンネルで動画もご覧ください。↓
この記事をまとめた人

- 神社チャンネルのメインキャラクター。北極神社の新米巫女。2017年、神社参拝セミナーで羽賀ヒカルと出会い、日本人の良さと伝統を伝えていきたい!という思いから、この神社チャンネルサイトが始まりました。(という設定です。)
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