【トツカノツルギ】神となった神聖な剣!十束剣
こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。
橋本ユリ
トツカノツルギは、漢字で書くと「十束剣」「十拳剣」となります。
日本神話に詳しい方はご存じかもしれませんね。
日本神話に詳しい方はご存じかもしれませんね。
この剣、日本神話の中で大活躍し、剣でありながらご神体ともなった、神代三剣の一つとも言われているのです。
トツカノツルギは霊剣である宿命からか、様々な名称や由来があります。それを、ご紹介いたします。
それでは参りましょう!
目次一覧
トツカノツルギとは
日本神話において、その名が何度も出てくる、日本を代表する霊剣です。
難しいのは、様々な呼称が混在していることです。
トツカノツルギを知るためには、まず別名を知り、その名における神話と紐づけすると、理解しやすいでしょう。
トツカノツルギの別名と対応する日本神話
それぞれの神話はとても面白いので、後に詳しく述べるとして、この章では
名称と、それにまつわる神話の概要を見てみましょう。
天之尾羽張剣(アメノオハバリノツルギ)
神産みの神話で使われている名称です。
イザナギがホノカグツチを斬り殺し、ホノカグツチの血によって神々が生まれる物語です。また、この剣を持って、イザナギはイザナミを求めて黄泉の国に赴きます。
天之羽々斬剣(アメノハバキリノツルギ)
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)討伐の神話で登場する名前です。
スサノオがこの剣を用いて八岐大蛇を退治しました。
布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)
国譲りの神話で使われている名前です。
建御雷神(タケミカヅチ)がこの剣を携えて、大国主に出雲の国を譲るよう、交渉しました。
また、神武東征の神話でも登場します。
神武天皇が東征するため熊野にさしかかった時、瘴気が立ち込めて兵が死に、神武天皇も気を失いましたが、布都御魂剣によって危機を脱するのです。
神度剣(かむどのつるぎ)
日本書紀では大葉刈(オオハカリ)、古事記では大量(同じくオオハカリ)と読みます)
国譲りの神話の中に出てきます。
アメノワカヒコの葬儀のときに、アヂスキタカヒコネが、亡くなったアメノワカヒコと間違えられたことに腹を立てて、喪屋を斬り倒した時に、使われました。
十束剣(トツカノツルギ)
十拳剣とも表記されています。文献の様々な箇所に使われており、一説によると剣の総称とも言われています。
橋本ユリ
そもそも、十束剣(十拳剣)という名前の由来は、何からきているのでしょうか?
トツカノツルギは長さを表していた?
実は、束(ツカ)とは長さの単位なのです。昔は、定規などありません。そこで考えだされたのが、「体の一部を単位としよう」というものです。
人間は不思議なもので、海外でも同じような手法で、長さの単位が決められていたりしています。
主に使われるのが、歩幅や両手を広げた長さ、手の親指と小指を広げた長さなどですが、束は指の幅を基準にしています。
指1本分の幅を「ひとふせ(一伏)」として、指四本分つまり四伏を、一束としたのです。
十束は剣の刀身の長さで、指40本分ということになります。
面白いもので、十拳剣も同じ要領で解説できます。
拳を握ってみてください。親指の分が少しはみ出しますが、ちょうど指四本分の長さになります。こぶし十個分の長さがあるから「十拳剣」なのです。
橋本ユリ
それにしても、こぶし十個分の長さとは、ずいぶん長い剣ですね。
さて、トツカノツルギの名称と神話の関係がスッキリしたところで、それぞれの神話についてお話ししましょう。
トツカノツルギにまつわる神話
トツカノツルギが関係する主な神話は、神産み・天照大御神との誓約・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)討伐・国譲り・神武東征などが挙げられます。
それぞれの神話を、トツカノツルギを中心に述べてみましょう。
神産み
イザナギとイザナミが、高天原から舞い降りて地面を作られたあと、その地を豊かにしていくために、神々を産みました。
イザナミは、まず風や木、土の神様を産みました。他にも家を守る神や、海の神などを産むのですが、最後にとても大切な、火の神様(ヒノカグツチ)を産んだのです。
しかし、そのときに陰部に大やけどを負って、イザナミは死んでしまいます。
怒ったイザナギは、ヒノカグツチを剣で殺してしまいます。その時に使われたのが、天之尾羽張剣です。(日本書紀では「十握剣」と表記されています)
その後もイザナギは諦めきれずに、黄泉の国までイザナミを迎えに行きます。しかし、その時には、イザナミの体は腐敗してしまっていたのです。
醜い姿を見られたイザナミは怒って、黄泉の国の悪霊をイザナギに差し向けました。
悪霊を追い払うために、前を向きながら後ろ手で振り回した剣が、十拳剣と記されています。
その続きの神話が、天照大神との誓約(ウケヒ)になります。
天照大御神との誓約
イザナミが亡くなり、黄泉の国からなんとか戻ってくることができたイザナギですが、黄泉の国の穢れを祓うため、筑紫の国の日向で、禊をしました。
その時に、イザナギが鼻を洗ったしずくから生まれたのが、アマテラス・ツクヨミ・そして最後にスサノオだったのです。
天照大神は高天原を治め、月読命は夜の国を、須佐之男命(スサノオノミコト)は海を、治めることとなりました。
しかし、母が恋しいスサノオは、黄泉の国に行きたい、と言って聞かなかったので、イザナギは激怒し、高天原からスサノオを追放してしまいます。
スサノオはそれに従い高天原を後にしますが、姉であるアマテラスにお別れを言おうとして、高天原に戻ってきます。
アマテラスはスサノオが攻めて来たのだと思い、玉飾りを身に着けて弓矢を持ち、スサノオを問い詰めます。
「お前は、なぜ高天原に戻ってきたのです?」
スサノオは答えます。
「私はただ、姉上にお別れを言いに来ただけです。」
しかし、アマテラスは一向に信じず、互いの言葉の真意を確かめるための占い(うけい、誓約)を、行うこととなったのです。
ここで十拳剣が出てくるのです。
スサノオが持っていた十拳剣をアマテラスは受け取り、3つに折って噛み砕き、粉々になった霧を吹きだすと、ダギリヒメ・イチキシマヒメ・タキツヒメという、3人の女神が生まれました。
スサノオは、アマテラスの玉飾りを受け取ってかみ砕き、同じように霧を吹きだすと、5人の男神が生まれたのです。
スサノオの持ち物である十拳剣で、女神が生まれたことから「戦う意志がなく身の潔白が証明された」と、スサノオは言いました。
橋本ユリ
十拳剣を噛み砕くとは、天照大神は、とてつもない女神ですよね。それと、粉々になった十拳剣が、また後に出てくるのは不思議なことです。
八岐大蛇討伐
スサノオが大活躍するのが、八岐大蛇討伐の神話です。
誓約によって、一度は許されたスサノオでしたが、その素行は粗暴で手に負えなかったため、再び高天原を追放されます。
出雲の国にたどり着いたスサノオは、鳥髪という場所で、ヤマタノオロチに苦しめられている村人たちと、出会います。
策略によってヤマタノオロチを眠らせて、剣でその体を切り刻みました。そのとき使われたのが、天之羽々斬剣です。
ちなみに、その剣でヤマタノオロチの尾を切りつけたところ、刃こぼれしてしまい、尾の中から天叢雲剣が出てきた、とされています。
聖剣が引き合わせたのでしょうか?なんとも暗示的な神話ですね。
この天羽々斬剣は、布都斯魂剣と名前が変わり、石上神宮に祀られています。
国譲り
天照大神が地上を見たとき、葦原中国(出雲の国)が栄えているのが見えました。「この国は、私の子が治めるべきでしょう」と言い、アメノホヒを向かわせますが、大国主のことをすっかり尊敬してしまい、戻ってきませんでした。
次に、アメノワカヒコを遣わしますが、大国主の娘に一目ぼれしてしまい、その娘と結婚して戻らず、うまくいきませんでした。
天照大神はキギシノナナキメを使者に出して、アメノワカヒコを詰問しようとします。
アメノワカヒコは、キギシノナナキメを弓矢で射ましたが、その矢が逆戻りしてアメノワカヒコの胸を貫き、死んでしまいます。
アメノワカヒコの両親が、その霊を弔うために喪屋を作ったのです。
そのとき、弔問に訪れたアジシキタカヒコネが、アメノワカヒコととても良く似ていたため、両親とアメノワカヒコの妻は、「アメノワカヒコが蘇った」と喜び、アジシキタカヒコネの手を取ります。
しかし、謀反人であるアメノワカヒコに間違われたアジシキタカヒコネは怒ってしまい、剣で喪屋を薙ぎ倒してしまうのです。この時使われたのが、神度剣(大量剣)です。
天照大神はさらに、大国主のもとに使いを出します。タケミカヅチとアメノトリフネが派遣され、大国主と交渉します。
大国主に対して威圧感を出すために、タケミカヅチは、剣先を上にして砂浜に刺し、その鋭い切先の上で、あぐらをかいて座ったのです。
このとき使われた剣が、布都御魂剣です。
石上神宮に祀られていますが、鹿島神宮においても、韴霊剣(フツノミタマノツルギ)という名称で、祀られています。
神武東征
神武天皇(天皇に就かれる前はカムヤマトイワレヒコ)は、国々を治めるために適した場所を探し、皆と相談し、東へ行くことにしました。
船と陸路で、大和の国(奈良)を目指して進んでいたところ、熊野の山中で突然、山の神が現れて瘴気を発し、兵が死に神武天皇も、気を失ってしまいます。(大熊に遭遇したとする記述もあります)
その窮地を見た天照大神は、熊野高倉下を地上に遣わし、霊剣を振って瘴気を払いました。すると、神武天皇は目を覚まし、兵もみるみるうちに体が治って、行軍を続けることができたのです。
この時の霊剣が布都御魂剣とされています。
橋本ユリ
神話の中でも触れましたので、この剣に関わりの深い神社をご紹介します。
十拳剣を祀る神社
神話の中で活躍する神々の傍らに、寄り添っていた十拳剣ですが、ご神体として、神社に祀られている神社もあります。
十拳剣に縁の深い神社を二社、ご紹介しましょう。
石上神宮
奈良県の天理市にあります。この神社の主祭神は布都御魂大神(フツノミタマノオオカミ)・布留御魂大神(フルノミタマノオオカミ)・布都斯魂大神(フツシミタマノオオカミ)の三柱です。
布都御魂大神は、韴霊剣に宿る魂が神格化したとされています。
布都斯魂大神は、ヤマタノオロチを討伐したときの剣の霊、とされており、同じ十拳剣ながら、別々の御霊として祀られています。
ちなみに、布留御魂大神は十種神宝が神格化したもの、と伝えられています。
ご利益は、健康長寿・病気平癒・除災招福・百事成就が挙げられており、剣が祀られていることから「過去の悪縁を絶つ」「起死回生」などのご利益もあるとされているようです。
また、拝殿や七支刀は国宝に、桜門は国の重要文化財に指定されています。
石上神宮拝殿(国宝) pic.twitter.com/lJmSrUG9TI
— とも (@kamtk726) July 21, 2014
石上神宮の拝殿です。
石上神宮の七支刀御朱印。邪気が祓われるとありがたい。 pic.twitter.com/FBFZqkpxf1
— ヒタタレン北緯35° (@hitataren) October 15, 2019
七支刀が描かれている御朱印です。
アクセス情報
天理駅からバスに乗り、石上神宮前で下車して徒歩約5分です。
住所:奈良県天理市布留町384
電話番号:0743-62-0900
鹿島神宮
この神社の主祭神はタケミカヅチとなっています。
国譲りのときに、大国主に交渉をした神ですよね。
その時に携えていた韴霊剣が、奉納されています。国宝に指定されており、宝物館に納められているのですが、宝物殿は工事のために、一時休館となっています。
鹿島神宮のご利益は何と言っても勝負運上昇です。その他に、学業成就(合格祈願)・武道成就・足腰健康成就などが挙げられています。
最近では恋愛成就など、縁結びのご利益もあると言われています。
鹿島神宮の御朱印良い。 pic.twitter.com/Jrl4WfGGWr
— 比叡山 (@cosmic_surfin) November 3, 2019
鹿島神宮の御朱印です。ご利益があると人気があります。
アクセスはJR鹿島線、鹿島神宮駅より徒歩約10分です。
また、東京駅八重洲南口から高速バス「かしま号」も出ており、都心からのアクセスに便利です。
また、有料・無料も合わせると、400台近く止められる駐車場がありますので、車で行くのもいいでしょう。
アクセス情報
住所:茨城県鹿嶋市宮中 2306-1
電話番号:0299-82-1209
まとめ
神々が活躍するために、なくてはならない剣。その中でも、神代三剣の一つである十拳剣は、パワーにあふれています。
破壊と創造の象徴、とも言える十拳剣。
橋本ユリ
何か、現状を打破したいかた、新しい道を歩んでいこうと考えているかたは、ぜひご紹介しました神社を、参拝してみてはいかがでしょうか?
きっと、神々とともに、剣の御霊も応援してくれるでしょう。
この記事をまとめた人
- 神社チャンネルのメインキャラクター。北極神社の新米巫女。2017年、神社参拝セミナーで羽賀ヒカルと出会い、日本人の良さと伝統を伝えていきたい!という思いから、この神社チャンネルサイトが始まりました。(という設定です。)
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