【櫛稲田姫】素行不良のスサノオを変えた女神!クシナダヒメとは!?
こんにちは!北極神社の新米巫女、橋本ユリです。
日本神話のなかでも、もっとも人気があるヤマタノオロチ伝説。
それまで、いいとこなしだったスサノオを英雄に変えた物語です。
主人公であるスサノオについての記事は多くありますが、ヒロインのクシナダヒメについては知らないという方もいることでしょう。
本記事ではヤマタノオロチ伝説の登場人物で、のちにスサノオの妻となったクシナダヒメについて解説していきます。
ヤマタノオロチ伝説の内容にもふれていますので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
それでは参りましょう!
目次一覧
クシナダ(櫛稲田姫、奇稲田姫)とは
クシナダヒメとは日本書紀では奇稲田姫(クシシイナダヒメ)、古事記では櫛名田比売(クシナダヒメ)と呼ばれている女神です。
アシナヅチ(脚摩乳)とテナヅチ(手摩乳)の8番目の娘として生まれますが、ヤマタノオロチの生贄にされてしまいます。
しかし、出雲に降り立ったスサノオ(須佐之男命)がクシナダヒメに恋をしたことから、ヤマタノオロチを退治して助けられたそうです。
クシナダヒメは命の恩人のスサノオと結婚して夫婦となり、仲睦まじく暮したことから縁結びの神様として、女性たちから厚い信仰を集めています。
因幡の白うさぎのお話で有名な心優しい神様・オオクニヌシノミコト(大国主命)はクシナダヒメの子孫、または日本書紀では子供だといわれているようです。
別名
古事記と日本書紀でも呼び名が違いますが、出雲国風土記では久志伊奈太美等与麻奴良比売命(クシイナダミトヨマヌラヒメ)、石川県にある久志伊奈太伎比咩神社では久志伊奈太伎比咩(クシイナダキヒメ)と呼ばれることもあるようです。
- 稲田姫(イナダヒメ)
- 櫛名田比売(クシナダヒメ)
- 奇稲田媛(クシイナダヒメ)
- 久志伊奈太美等与麻奴良比売(クシイナダミトヨマヌラヒメ)
- 久志伊奈太伎比咩(クシイナダキヒメ)
クシは「素晴らしい、霊妙」の意味で、ナダは「稲田」を表していることから、五穀豊穣のご利益がある神様として知られています。
また、ヤマタノオロチ退治の時に夫となるスサノオに櫛に姿を変えられたことから、クシナダヒメと呼ばれるようになったという説もあるようです。
また、クシナダヒメの両親が漢字表記で手摩霊と足摩霊と書かれるため「手足をなでる」「撫でるように育てられた娘」という意味でヤマトナデシコ(大和撫子)の語源になっているともいわれています。
日本神話で謎の多い瀬織津姫と同一人物であるとする説の本も出ているようですが、瀬織津姫の正体に関しては諸説あるため信憑性は薄そうです。
ご神格
クシナダヒメはその名前の由来から稲田の神様として信仰されてきました。
全国の氷川神社をはじめ、多くの神社で御祭神として祀られています。
しかし、単独で祀られることはあまりなく、ほとんどの神社では夫のスサノオや子孫のオオクニヌシノミコトと一緒のようです。
ご利益
クシナダヒメは稲田の神であることから五穀豊穣のご利益で知られていますが、夫のスサノオと仲睦まじく暮したことから縁結びのご利益でも有名です。
- 五穀豊穣
- 金運招福
- 夫婦和合
- 縁結び
- 衣食住守護
- 厄除開運
また、五穀豊穣が金運招福をイメージさせることから、金運のご利益でも信仰を集めるようになりました。
クシナダ(櫛稲田姫、奇稲田姫)の神話
有名な日本神話のヤマタノオロチ伝説は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
クシナダヒメはこの物語に登場するヒロインで、乱暴者で知られていたスサノオを虜にして、勇敢で穏やかな人物にかえてしまうほど美しい女神だったといわれています。
日本には古くから伝わる神楽という伝統芸能がありますが、ヤマタノオロチ退治はもっとも公演されている大人気の演目でもあります。
スサノオとクシナダヒメの出会い
姉のアマテラスオオミカミの逆鱗にふれてしまったスサノオは高天原から追放されて、出雲の国にやってきます。
仕方なくスサノオは人を探して斐伊川の上流に向かいますが、そこで泣いている夫婦を見かけました。
不思議に思ったスサノオは夫婦に声をかけます。
アシナヅチとテナヅチと名乗る夫婦は、これまでのことをスサノオに教えてくれました。
「娘が8人いるが、毎年ヤマタノオロチがやってきて娘を1人ずつ食べていきます。今年も、もうすぐヤマタノオロチがくる時期になるため、最後に残った末娘まで失うと思うと悲しくてしかたないのです」
その時、スサノオは夫婦の隣にいる最後の娘クシナダヒメに気が付きます。
そして、その美しさに一目惚れをしてしまうのでした。
クシナダヒメが気に入ったスサノオはヤマタノオロチという化け物について夫婦に聞きます。
すると、ヤマタノオロチは1つの胴体に8つの頭と8つの尾があり、目は真っ赤で、体中がコケに覆われた生き物だと言いました。
また、その大きさは8つの谷と8つの山にまたがるくらい巨大だといいます。
さすがのスサノオもあまりの恐ろしい風貌にたじろぎますが、考えを決めると夫婦にこう切り出しました。
「クシナダヒメを私の嫁にくれるのなら、ヤマタノオロチを退治してやろう!」
驚くアシナヅチとテナヅチでしたが、スサノオがアマテラスオオミカミの弟であることを知ると喜んで条件を受け入れます。
そして、スサノオはヤマタノオロチを退治する準備を始めることにしました。
ヤマタノオロチとの戦い
スサノオはアシナヅチとテナヅチに強い酒を準備するように頼みます。
そして、クシナダヒメの身を守るために神力を使って、彼女を櫛の姿に変えて自分の髪にさしました。
スサノオは8箇所に酒を配置させ、8つの頭を持つヤマタノオロチに強い酒を飲ませようとします。
しばらくして、クシナダヒメを食べにやってきたヤマタノオロチはスサノオの読みどおり強い酒をガブガブ飲むと酔っ払って寝てしまいました。
スサノオは眠っているヤマタノオロチに近づくと剣を振りかざして切り刻みます。
しかし、剣がヤマタノオロチの尾に差し掛かった時、スサノオは不思議な手応えを感じました。
よく見てみると尾のなかには剣が入っています。
スサノオはその剣を取り出すと、姉のアマテラスオオミカミに献上しようと決めました。
この時の剣がのちにニニギノミコトが天孫降臨する際にアマテラスオオミカミからもらう三種の神器の1つ草薙剣(くさなぎのつるぎ)だといわれています。
仲睦まじい夫婦となったスサノオとクシナダヒメ
戦いが終わるとスサノオはクシナダヒメをもとの美しい娘の姿に戻し、約束通り結婚します。
スサノオは出雲がとても気に入り、クシナダヒメと暮らす新居もこの地に建てることにしました。
その後、スサノオとクシナダヒメは多くの子供を授かります。
日本神話ではそのうちの1人が因幡の白うさぎで有名なオオクニヌシノミコト(大国主命)だといわれていますが、子孫であるという説もあるようです。
オロチと戦ったヒーロー・スサノオとは
スサノオ(須佐之男命)はアマテラスオオミカミ(天照大神)、ツキヨミノミコト(月読命)と共に三貴神と呼ばれることもある日本神話の中心的な神様です。
3人はイザナギノミコト(伊耶那岐命)とイザナミノミコト(伊耶那美命)の神夫婦から生まれた兄弟でスサノオは末っ子になります。
日本書紀ではスサノオは父・イザナギノミコトから海原を治める命令受けていましたが、母イザナミノミコトが亡くなった悲しみで任務放棄してしまう、打たれ弱い一面を持った神様でした。
父親の命令を無視しておきながら、姉のアマテラスオオミカミが治める高天原にやってくると散々悪行を行い神々の怒りを買っています。
そして結局、アマテラスオオミカミの逆鱗にふれ、高天原から追放されることになりました。
この追放でスサノオはクシナダヒメがいる出雲に降り立ち、ヤマタノオロチ退治を行うことになるようです。
日本神話でスサノオほど、場所や出会う人によって性格が激変した神様はおそらく他にいないでしょう。
母親を失い泣き暮らしたかと思うと、アマテラスオオミカミのところではとても幼稚な嫌がらせを繰り返していました。
それにも関わらず、クシナダヒメに出会った後はとても勇敢な神様として描かれています。
まるで多重人格のような性格ですが、最終的には英雄になったことから、人間臭い魅力のある神様として人気があるようです。
クシナダヒメはなぜ櫛に変えられたのか
スサノオはクシナダヒメを守るために湯津爪櫛(ゆつつまぐし)という歯の多い櫛に変えたといわれています。
そして、わざわざ自分の髪に挿して、戦場まで連れていきました。
この行動に対して、何故クシナダヒメを櫛に変える必要があったのか、戦場に連れて行ったのかと疑問を感じる方もいるようです。
諸説あるようですが、昔は櫛には魔力があると考えられていたことから、どうしてもクシナダヒメを守りたいスサノオは櫛の魔力に頼ったといわれています。
また、ヤマタノオロチを倒すためにこの魔力を利用したともいわれているようです。
ただ実際はクシナダヒメを戦場には連れて行かず、現在の島根県にある八重垣神社のある場所に隠したという説もあります。
クシナダ(櫛稲田姫、奇稲田姫)を祀る神社
クシナダヒメは基本的に夫のスサノオや子孫のオオクニヌシと祀られることが多いようです。
単独でクシナダヒメだけを祀っている神社は茨城県にある稲田神社と島根県にある稲田神社だけになります。
島根県の稲田神社のそばにはクシナダヒメが生まれた時に産湯として利用された“産湯の池”とへその緒を竹で切ったことから“笹の宮”と呼ばれる場所があるようです。
クシナダヒメを御祭神に祀る神社
- 氷川神社(埼玉県)
- 六所神社(神奈川県)
- 千代田神社(大阪府)
- 八王子神社(大阪府)
- 今宮神社(京都府)
- 八坂神社(京都府)
- 廣峯神社(兵庫県)
- 湯浅大宮 顯國神社(和歌山県)
- 須賀神社(和歌山県)
- 山邊神社(島根県)
- 須佐神社(島根県)
- 八重垣神社(島根県)
- 椙本神社(高知県)
- 櫛田神社(富山県)
- 櫛田宮(佐賀県)
- 久志伊奈太伎比咩神社(石川県)
結婚したクシナダヒメとスサノオの新居があった地が、今の島根県の須賀神社が創建されている場所とされています。
また、同じく島根県にある八重垣神社はスサノオが詠んだ和歌にちなむ神社で、クシナダヒメがヤマタノオロチから身を隠した場所ともいわれているそうです。
福岡県にも櫛田神社がありますが、現在の御祭神は大幡主大神・天照大神・素戔嗚大神でクシナダヒメではないようです。
しかし、神社についた名前から、もともとはクシナダヒメを祀っていたとする説もあります。
六所神社の湯津爪櫛(ゆつつまぐし)のお守り
神奈川県大磯にある相模国総社・六所神社はクシナダヒメと夫のスサノオ、息子のオオナムチノミコトが御祭神に祀られています。
オオナムチノミコトはあまり聞かない名前ですが、オオクニヌシノミコトと同一人物だといわれています。
この六所神社にはスサノオが神力を利用して、クシナダヒメを櫛に変えたという神話から「湯津爪櫛のお守り」があります。
この「湯津爪櫛のお守り」を持つと様々なご利益があることから、女性に人気のお守りになっているようです。
- 事故、災害、嫌がらせなどから守ってくれる
- 良縁に恵まれる
- 女性から男性に送ることで開運効果がある
- 男性から女性におくると「愛の証」になる
本来は五穀豊穣の神様であるクシナダヒメですが、夫婦円満であったことから縁結びや良縁、また、櫛には魔力がこもるという言い伝えから様々な邪気を払い、開運に導いてくれる力があるといわれています。
橋本ユリ
女性には嬉しいご利益ばかりですので、1つ持っておくと良いかも知れません。
八坂神社の石見神楽でオロチ退治が見られる!
京都にある八坂神社では毎年祇園祭の演目で石見神楽が奉納されています。
神楽とはあまり聞き慣れないかもしれませんが、日本で古くから親しまれている伝統芸能です。
八坂神社では45年前から祇園祭で神楽が奉納されていて、豪華な衣装にお面をつけた役者がオロチ退治を舞う姿を見ることができます。
ヤマタノオロチ退治は人気の演目なので、毎年行われていますが、変更になる可能性もあるようです。
気になる方は八坂神社の公式サイトで確認してから足を運ぶようにして下さい。
まとめ
橋本ユリ
日本中の神社で祀られているクシナダヒメについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
日本神話のなかで、もっとも有名なヤマタノオロチ伝説はとてもドラマチックな物語だと思います。
ただ、ヤマタノオロチ伝説ではスサノオが主人公なので、クシナダヒメという人物がどんな性格だったのか分かるエピソードはあまりないようです。
分かることといえば、素行不良で多重人格気味だったスサノオがクシナダヒメに出会うことで落ち着き、人気者の神様になったということだと思います。
クシナダヒメとスサノオは末永く幸せに暮したようなので、おそらく相性も良かったものと思います。
アマテラスオオミカミを怒らせるほど、悪行が酷かったスサノオを変えてしまったクシナダヒメという女神が、どんな性格だったのか想像しながら日本神話を読んでみるのも楽しいかもしれません。
この記事をまとめた人
- 神社チャンネルのメインキャラクター。北極神社の新米巫女。2017年、神社参拝セミナーで羽賀ヒカルと出会い、日本人の良さと伝統を伝えていきたい!という思いから、この神社チャンネルサイトが始まりました。(という設定です。)
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